ビリー・ワイルダーの「ワン・ツー・スリー」(1961)

先々週の日曜日、前から観たいと思っていたビリー・ワイルダー監督の「ワン・ツー・スリー」という映画をシュテーグリッツのAdriaという古い映画館で観る機会があった。ベルリンに縁の深いワイルダー監督による、壁ができる直前のベルリンが舞台という映画(しかもコメディー)となると、一度は観ておきたい映画だった。
舞台は1961年のベルリン。コカコーラ社西ベルリン支店長マクナマラのもとに、本社の社長令嬢スカーレットが送られることになった。まだ10代の自由奔放な彼女は、男との浮き話が絶えない。そのぶっとびぶりはかなりのもので、テンペルホーフ空港に降り立つやいなや、いきなりマクナマラ夫妻を面食らわせることになる。もちろん上司の願いとあっては断るわけにはいかない夫妻。じっとしていられない性格のスカーレットはそのうちこっそり東ベルリンに遊びに行くようになり、がちがちのコミュニストのオットーとできてしまう。ある日、2人の突然の結婚報告を知らされたマクナマラは顔面蒼白。社長が彼女を迎えに来るまでになんとかしなければ、自分の出世はなくなってしまう。マクナマラはオットーを「アメリカのスパイ」に仕立てて、スカーレットと引き離そうと策略を施す。しかし、その直後、スカーレットが妊娠していると知るや否や作戦を変更。マクナマラはオットーを西ベルリンに連れ戻し、今度は貴族の養子に仕立て上げて2人を再度くっつけようとする。さあ大変、社長夫妻がテンペルホーフ空港に降り立つまでもう時間がないぞ・・・
最初から最後まで息つく暇がない、痛快なドタバタコメディー映画だった。全面に渡って当時のイデオロギー対立を茶化すギャグが織り込まれ、さらに主役のジェームズ・ギャグニーをはじめみんな機関銃のようなスピードでしゃべりまくるものだから、ついていくのがなかなか大変。それにしても、あの時代にこういう内容映画を撮るとはさすがビリー・ワイルダー!20年以来西ベルリンに住んでいる友達によると、この映画は公開当時話がリアル過ぎたのか全く受けず、80年代になってから西ベルリンでよく再上映されたという。私にとって最もスリリングだったのは、車に取り付けられたある仕掛けによってオットーが東ベルリンで逮捕され、東に乗り込んだマクナマラがオットーを西に連れ戻すまでの一連のシーンだ。廃墟の街並みをバックにしたカーチェイスまであって楽しめる。「こんなシーンをよく東で撮影できたなあ」と思って見ていたが、「東のホテル」のシーンにどう見てもアンハルター駅(西側にある)らしき廃墟が写っていたので、どうやら西ベルリンで撮ったようだ。後で知ったところによると、ブランデンブルク門での撮影許可がどうしても下りなかったため、バイエルンのある場所に大掛かりなセットを作って撮影したのだそうだ。どうみてもホンモノに見えたあのパリ広場は偽物だったのか。何度も出てくるコカコーラ時計と風船の仕掛けには笑ってしまった。
余談になるが、日曜日の12時上映のこの映画、観客は何と私を含めて2人だった。売店のおじさんからチケットを買ったところ、「コーラかゼクトをごちそうするよ」というもてなしぶりに驚いたが、中に入ってみてその理由がわかった。がらがらの映画館で古い映画を見たことは何度もあったけれど、2人というのはさすがに初めてだった。もう1人の客が後ろでげらげら笑っていると、意味がよくわからなくても自分も笑わないといけないような気分になってくる。贅沢なようで、どことなく落ち着かない気分の映画鑑賞でした。
日本語版のDVDも出ているので、興味のある方はどうぞ。



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12 Responses

  1. akberlin
    akberlin at · Reply

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    ベルリンを舞台にしたこんなアメリカ映画があったとは!
    とても面白そうです。観てみたい!!
    いま、オスタルギー流行りのベルリンでリメイクを作っても
    面白そうだなぁ。ってリメイクにオリジナル作品はあった試しが
    ないのですが。

  2. rbhh
    rbhh at · Reply

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    こんにちは。
    いいですよね、この映画。私も何年か前に観てとっても感動しました。
    できることなら、ベルリンでも観てみたいです!
    それにしても、日曜日にたったふたりとは驚きです!落ち着かないって気分よーくわかります。私もしょっちゅうガラガラの映画館で観てますので。。。

  3. gramophon
    gramophon at · Reply

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    早速、DVD注文します!楽しみです。

  4. HERO
    HERO at · Reply

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    こんにちは、はじめまして。 僕はフィレンツェからかいてます。 10年ほど前まだ勉強してた頃ベルリンに少しすんでいたんですが、もう見る影もないくらい変わってるんでしょうねぇ・・・ 久しぶりにいって見たくなりました。 クラシックが好きとのこと、しかもフルートを吹く・・・ってプロフィールにありましたが・・・ ベルリンフィルのフルートのトップのエマヌエルはその当時からの友達です。 ところでリンクはらせてもらってもいいですか? これからもよろしくお願いします!

  5. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >akberlinさん
    >ベルリンを舞台にしたこんなアメリカ映画があったとは!
    私も最近まで知りませんでした。
    一見の価値はありだと思います。ただし、ヤンキー(アメリカ人)対コミュニストの人物の描き方はかなりステレオタイプ的ですけどね。そこがまた笑えるところではありますが。

  6. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >rbhhさん
    コメントありがとうございます。すでにこの映画をご覧になっていたんですね。
    >日曜日にたったふたりとは驚きです!
    家の中にいるのがもったいないくらいいい天気でしたから、まあしょうがないのかもしれません。ちなみに、今日も抜けるような青空が広がっています。

  7. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >gramophonさん
    早速のお買い上げありがとうございます(笑)。
    いきなり冒頭で、まだトラムが走っているカイザーヴィルヘルム教会前のシーンが出たときは「お~」と思いました。

  8. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >HEROさん
    はじめまして!リンクはもちろんOKです。
    フィレンツェは2回ほど行ったことがありますが、好きな街です。
    またゆっくり行きたいなぁ。

    >エマヌエルはその当時からの友達です。
    おお!そうなんですか。いつもコンサートなどでお見かけするだけですが、とてもフレンドリーそうな方ですよね。

    これからもどうぞよろしくお願いします。

  9. gramophon
    gramophon at · Reply

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    ひとりで大笑いして見ましたよ。日本語字幕では、英語科白に混ざったドイツ語のニュアンスが訳しきれてませんが、雰囲気は十分伝わってました。いちいち踵を鳴らしたり、起立する部下たちにプロイセンの軍隊主義やナチの亡霊を描いた手腕に脱帽です。ベルリンを知る人には何でも笑い飛ばせるいい映画でした。

  10. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >gramophonさん
    早速ご覧になられたんですね!
    いいなあ。私もあの映画を日本語字幕付きでもう一度見てみたいです。

    >起立する部下たちにプロイセンの軍隊主義やナチの亡霊を描いた手腕

    なるほど。あの動きはそういう意図からだったのですね。gramophonさんにとって、「ハズレ」の買い物ではなかったようで何よりです。

  11. 第三市民
    第三市民 at · Reply

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     そんな筋だったのですか。
     たぶん高校生の頃に日本で封切りされた映画ですが、 ホルスト・ブッフホルツみたいなタイプがドイツでもてるのか・・・なんて記憶しか残っていないくて、お恥ずかしい。
     機会があれば、もう一度観直します。

  12. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >第三市民さん
    あの映画をリアルタイムで体験されたのですか!
    大変テンポのいい映画です。早口で字幕に付いて行くのが大変だったので、私もDVDでもう一度観たいですね。

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