「ベルリン パノラマ写真展 1949-1952」

Pariser Platz, 1951, Aufgenommen vom Fotografen Fritz Tiedemann, rekonstruiert von Arwed Messmer 2008, 1,25 x 5,84 Meter
ベルリンに住んでいるとこの町ならではの展覧会に出くわすことが少なくないのですが、これは最近観た中でも白眉と言えるものでした。クロイツベルクのBerlinische Galerieで開催中のSO WEIT KEIN AUGE REICHT (BERLINER PANORAMAFOTOGRAFIEN AUS DEN JAHREN 1949 – 1952)です。
ユダヤ博物館から徒歩5分の距離にあるBerlinische Galerieは、私の好きなギャラリーの1つ。ギャラリーといっても、規模と内容からから見てもう立派な現代美術館です。その内部の一角、大きな長方形の部屋一杯に、戦後間もない時期に撮影された東ベルリンのパノラマ写真が展示されているのですが、これがただのパノラマではありません。まず1つ1つのサイズがとんでもなく大きい。入り口の壁に、約25メートルに渡って飾られている1枚の(!)写真にまず圧倒されました。フリードリヒスハインの労働者街、Fruchtstraßeのある日の日常がそっくりそのまま目の前に現出しているのです。アパートに戦争の傷跡が生々しく残る風景をゆっくり観察しながら、右から左へ歩いていくと、まるで自分がその時代にいるかのような錯覚にとらわれます。
一体なぜこんな写真が残っているのか?
実はこれら、Fritz Tiedemannという写真家が東ベルリンの当局から委託を受け、1949年から52年にかけて大判カメラで撮影した純粋に記録用の写真です。その数は約1500枚。60年近くの月日を経て、写真家Arwed Messmerがこれらの写真を組み合わせデジタル加工し、1枚1枚に仕上げたのが本展覧会の写真というわけです。その労力には拍手を送りたくなります。
なるほど、そういうことを知ると、確かに写真をよく見ると不自然な面があります。連続撮影ゆえ、1枚の写真に同じトラムが2台写っていたりする。それに、展覧会のサブタイトル通り、「人間の視界はこんなに広くない」。
ベルリンの古い写真は好きでよく見ますが、そのどれもが見たことのない風景ばかりでした。1953年の暴動で黒焦げになる前のコロンブスハウスから見たポツダム広場とライプチヒ広場のパノラマ。今と区画が全く違う市庁舎前の通りの風景。ヴァルター・ウルブリヒトスタジアムを建設中のショセー通り。王宮が取り壊された翌年のドーム周辺の風景は、共和国宮殿が解体されたばかりの現代の風景とだぶります。それにしても、観光客であふれる今と違ってどこも人通りが少ないこと。
カタログも出版されていますが、この迫力は本のサイズでは伝わらないでしょう。写真の持つ記録の力のすごさというものを思い知らされた展覧会でした。本来は今週末までの展覧会でしたが、会期が延長されて2月22日までとなったので興味のある方はぜひ。



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