元ベルリン・フィルのソロ・フルート奏者、カールハインツ・ツェラーさんが先月末76歳で亡くなったそうです。カラヤン時代のベルリン・フィルを支えた偉大なフルーティストですが、私の先生がツェラーさんの弟子だったことで、いろいろ話を聞くことも多く、身近に感じることのできる音楽家でもありました。
98年に来日された時、自分の目の前でさらっと吹いてくれた「牧神の午後」の冒頭のソロとバッハのロ短調ソナタの、その場を包み込むようなツェラーさんの笛の音は忘れられません。ああいう音色がフルートで出せたらと私は今でも思っています。
東京での飲みの場に2回ほど同席させていただくことがありました。何とかコミュニケーションが取りたくて、でも当時の私はほとんどドイツ語が話せなかったので、ドイツ語のできる友達を連れて、昔のことなどをいろいろと聞いたものです。「ベルリンフィル時代の最も印象に残ったコンサートは?」という私の質問に対して、カラヤンではなく、ツェラーさんはまずカルロス・クライバーの名前を挙げたのが印象に残っています。
私がベルリンに来てからは、フィルハーモニーに通っていれば、またふとツェラーさんに会えるのではないかとどこかで思っていましたが、残念ながらその願いは叶いませんでした。
ご冥福をお祈りします。