ホロコースト記念碑(2)

前回の続き)
このホロコースト記念碑だが、1万9073㎡の敷地の中に、全部で2711基の石碑が並んでいる。ただし、この2711という数に象徴的な意味合いはないとのことだ。石碑の大きさは全て横0.95m・縦2.38mで統一されているが、高さはそれぞれ異なっている。前回の写真ではその辺が伝わりにくかったので、今回は中にまで入ってその様子をお伝えしてみたい。
ホロコースト記念碑には柵も入り口もなく、24時間どこでも好きなところから中に入ることができる。では、ティアガルテンに面したEbert通りから入ってみよう。石碑の上に腰掛けて、新聞を広げている人が映っている冒頭の写真でもわかる通り、最初はこの程度の高さである。ただし底面は真っ平ではなく、波のようにうねっているのがおわかりいただけると思う。
さらに奥へ進んで行くと、石碑はどんどん高くなっていく。それにしたがって、訪れるものが受ける心理的な圧迫感も増してくるという仕組みになっている。

石碑は一番高いもので4メートル以上もある。石碑のコンクリートの表面には、特殊な工法処理が施されていて、落書きは簡単に消すことができるのだそうだ。
内部は大人2人がやっとすれ違えるほどの広さしかない。まさに迷宮に迷い込んだかのようだ。この特異な空間の中で何をどう感じるかは、訪れたものそれぞれにゆだねられる。
この広大な記念碑の南東地下には情報センターがあり、ユダヤ人やホロコーストの犠牲者についてのさまざまな展示が置かれている。入場は無料で、開場時間は毎日10時から20時まで(冬季は19時まで)。多くの博物館や美術館のように月曜が休館日というのではなく、年末年始の数日間などを除き年間ほぼ毎日オープンしているというのだから驚く。人件費もそれだけ余計にかかるのだろうが、「過去と徹底的に向かい合う」という戦後のドイツの姿勢が、こういうところにも表れているように思う。ちなみに、壁博物館とユダヤ博物館は年中無休らしい。
私が以前情報センターを訪れた時は、この入り口のすぐ横にプレハブ小屋があって、まるで空港のような厳重な荷物検査を受けさせられたのだが、最近それがなくなったようだ。
今までの写真で感じていただけたかもしれないが、ホロコースト記念碑は、昼間と夕方、そして光の当たり具合によって受ける印象が微妙に異なる。ブランデンブルク門やポツダム広場から徒歩5分という立地条件のよさもあるし、ベルリンを訪れるものにとっては必見の場所のひとつに数えられるだろう。



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10 Responses

  1. しゅり
    しゅり at · Reply

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    はじめまして。
    ベルリンが好きで偶然見つけたマサトさまのブログ。
    非常に楽しみに読んでいます。
    このホロコーストの記念碑、6月上旬に行きました。
    プレハブで空港のようなセキュリティーチェック受けました。
    ユダヤ博物館でも同じようなセキュリティーチェックがあったので
    特におもわなかったのですけど、なくなっちゃったんですかー。
    なんだかえらく早くになくなったので驚いています。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    しゅりさん、はじめまして。HP拝見しましたが、本当にドイツとベルリンがお好きなのが伝わってきました。カール・マルクス・アレーを歩いている夢を見るとは、もはや相当な域ですね(笑)。こういう方々に読んでもらっているのかと思うと、書く方も少し気合が入ります。

    記念碑のプレハブはなくなっていましたが、ひょっとしたら地下の方でそのようなチェックが行われている可能性もあり、その辺は未確認です。ただ、ユダヤ博物館のセキュリティーチェックがなくなることは、まずないと思っています。

  3. しゅり
    しゅり at · Reply

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    中央駅さま・・・とお呼びした方がよろしいのでしょうか。
    さて、私の拙いHPへ遊びに来てくださって
    本当にありがとうございます。嬉しいです。
    まだこの前の旅行記が完成していないのですが
    実は書き終えちゃうと気持ち的にベルリンが遠くに行ってしまう
    ような気が勝手にしていまして(笑)、着手できずにいます。
    (いえ、グータラなのもあるのですが)
    中央駅さんのブログを見て遠いベルリンに想いをはせていますので
    本当に私のニードにぴったりなブログを見つけたと
    非常に喜んでおります。

    さて、カール・マルクス・アレーは実はまだ行っていないのです(汗)。
    中央駅さんのように歩いてみようと思ったのに
    疲れ果て行けませんでした。
    その口惜しさからでしょうか。
    勝手に夢に見ています。
    この前はハッケシャーマルクトの駅にいる夢を見ました。
    その前はKaDewe周辺を歩く夢を・・・。
    どーもベルリン行きたい病のようです(笑)。

  4. havigo
    havigo at · Reply

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    こんばんは!私のブログに寄って頂き、ありがとうございます!
    さて、今回のホロコースト記念碑(2)
    またまた興味深く読ませて頂きました。中に入り込むと写真からでも圧迫感をかなり感じますね。広場の下の方と言うのでしょうか・・・コンクリートの低いモノの方から見た感じと、上の方からみた感じとでは雰囲気が随分と違い、上の方からでは無機質で寂しい感じがしますが、下の方からだと(写真に人が写っているからかもしれませんが)安心感があります。マサトさんがおっしゃるとおり、その時々で雰囲気が違うと感じられる場所なのでしょうね。

    話しは変わりますが、私はサッカーのナショナルチームはドイツ代表のファンですので、マサトさんから「WM」情報をどんどん教えて頂きたいと思います!

  5. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >しゅりさん
    ぜひまたベルリンにいらしてくださいね。しゅりさんの「ベルリンに行きたい病」をますます刺激するような内容にしていけたらと思っています。

    >havigoさん
    ご感想ありがとうございます。サッカーに関しては、最近あまり大きなネタがないのですが、10月8日にはトルコ対ドイツ戦がありますし、ますます白熱する欧州予選も控えています。その他にもおもしろそうなWM情報を見つけたら、また書きますね。今のドイツ代表は本当に不安だらけなので、人事ながら私も応援したい気持ちに駆られます。

  6. rakudano
    rakudano at · Reply

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    はじめまして。ベルリンには私も昔住んでいたのですが、こんな記念碑が出来たんですね。ほー。確かに心理的な圧迫感がよく感じられそうです。またベルリンにいく機会があったらぜひよってみたいと思います。ホロコーストつながりということで、TBさせていただきますね。

  7. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    rakudanoさん、はじめまして。TBありがとうございます。大変興味深いブログに出会えてうれしく思っています。テレビのニュースでは、エルサレムといえば物騒なニュースしか伝わってきませんが、普通にそこで生活し日常を送っている人々がいるのだという当たり前の現実を、思い知らされたような気分です。印象的な写真の数々、またじっくり拝読したいと思います。

  8. masagata2004
    masagata2004 at · Reply

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    ぶっちゃけた本音、ドイツの人は自国の過去についてどういう意見を持っているのですか? 「つくる会」の教科書のような考え方はないのですか?

  9. nezumix
    nezumix at · Reply

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    masagata2004さん、初めまして。

    この本が参考になるかと思います:
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/433403313X/qid=1132669844/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/249-8233504-8721939

  10. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >masagata2004さん
    お尋ねの内容を、この短いコメント欄で説明することは私にはできませんし、このブログを、複雑でデリケートな歴史認識問題を議論する場にはしたくないという気持ちもあります。申し訳ありませんが、ご理解の程よろしくお願いします。

    >nezumixさん
    参考になりそうな本をご紹介いただき、ありがとうございました。

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