カイザー・ヴィルヘルム記念教会前にて
まずは皆さん、Frohe Weihnachten(メリー・クリスマス)!
昨日、クリスマスにふさわしいとてもすてきなコンサートを聴いてきたので、今回はそのお話をしたいと思います。
ドイツのクリスマスには、バロック音楽がとても似合うように思います。昨日聴いたベルリン・フィルの定期公演は、彼らにしては珍しく18世紀の音楽だけで固めたプログラムでした。
今回の指揮はジョヴァンニ・アントニーニ。イタリア・ミラノの、Il Giardino Armonicoという古楽グループのリーダーをやっている人です。私は彼らのCDを何枚か持っていますが、ほとんどロックを思わせる鮮烈なリズムで奏でられるアルモニコの演奏は、聴いていて心地いいことこの上ありません(私が持っている中ではこのCDがおすすめです)。
まずは、ベルリン・フィルのシュテファン・シュヴァイゲルトさんのソロで、モーツァルトのファゴット協奏曲。モーツァルトが弱冠18歳の時に作曲した、数ある彼のコンチェルトの中でもおそらく最もマイナーな曲かもしれません。私もナマで聴くのはこれが初めて。しかし、シュヴァイゲルトさんの演奏は、名ソプラノ歌手が自由自在にオペラアリアを歌うかのような、そんな華がある全くすばらしいものでした。ファゴットという楽器の響きには、人の声を思わせるあたたかさがあって、私はとても好きです。
さて次の曲ですが、ヨーゼフ・マルティン・クラウスというドイツの作曲家をご存知の方っているでしょうか。時代とともにほぼ完全に忘れ去られていたこの作曲家は、1756年にマイン地方で生まれ、1792年にストックホルムで死去しているのですが、つまりモーツァルト(1756-1791)の生きた時代とほぼ完全にだぶっているのです。こんな人がいたんですね。プログラムに「クラウスは1990年代初頭で最も興味深い再発見のひとつ」なんて書いてある通り、この交響曲ハ短調はなかなかに大胆な曲。後のベートーヴェンにつながるような激しさや悲壮感が全体を貫いていて、優美なメヌエットが排されているのもこの時代には珍しいといっていいでしょう。また、ホルンが2本ずつ左右に配置されていたりと、いろいろな意味でおもしろい曲でした。しかし、このクラウスという人の肖像画を見て思ったのは、実はこの人相当奇人だったのではないかということ。同じ奇人でもモーツァルトのような天才でなかったことは確かですが。
後半、指揮者のアントニーニが手に持って登場したのは、なんとあのソプラノリコーダー。この人は実はリコーダー奏者でもあるのですが、次のサンマルティーニのリコーダー協奏曲、圧巻でした。とにかくこのアントニーニは、笛を持つと途端にいきいきしてくるんです。その信じられないテクニックと音楽性。リコーダーを吹くだけでなく、笛を指揮棒に見立てて吹きながら指揮したり、踊るようなしぐさを見せたり、足でタップを取ったり、まるで小鳥が激しくおしゃべるしているかのような、そんな演奏であり舞台姿でした。このライブ感と興奮はなかなか言葉にできません。もしアントニーニとアルモニコの来日公演があったら、これは絶対のおすすめです。
プログラムの最初と最後を飾ったのはヘンデル。特に最後の「王宮の花火の音楽」は、3本のトランペットが祝祭的な雰囲気をいやがうえにも盛り上げます。とっても幸せな気分になれたクリスマス前のコンサートでした。
Berliner Philharmoniker
Giovanni Antonini CONDUCTOR AND RECORDER
Stefan Schweigert BASSOON
George Frideric Handel Concerto Grosso in B flat major, Op. 3 No. 2
Wolfgang Amadeus Mozart Bassoon Concerto in B flat major
Josef Martin Kraus Symphony in C minor (1783)
Giuseppe Sammartini Recorder Concerto in F major
George Frideric Handel Music for the Royal Fireworks
(明日から2日間、ライプチヒに行ってきます。帰って来たらその模様もお伝えするつもりです。それでは皆さん、すてきなクリスマスを!)
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マサトさん ☆メリークリスマス☆
いつもは背を向けている指揮者が客席側に向かって振って
くれたり、自ら楽器を演奏してくれると雰囲気もまた変わって
わくわくしますね。私が先日行ったフルートアンサンブル
のコンサートでも、指揮者がフルートを吹きました。
(横笛だからリコーダーみたいに指揮まではできないけど)笑
その技巧や音色にはやはりみな圧倒されましたよ。
同じ笛でも、リコーダー協奏曲、ぜひ聴いてみたいです!
この時期はいろいろな曲に出会えて、いいですね。
素晴らしい音楽やいい音を聴いて自分も同じ音が出せたら
いいのになあって思います。
ライプチヒでのお話も楽しみにしています。^^
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やはりドイツのクリスマスは、クラッシックが定番なんでしょうか??
ライプチヒの話も楽しみにしてます。
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はじめまして!以前からROMいたしておりましたが、ちょうどアントニーニの新譜についてエントリを書きましたので、TBさせていただきました◎
すてきな演奏会を聴かれたようで、うらやましいです。私もアントニーニの録音が好きでよく聴きますが、それにしてもベルリン・フィルに登場とは!しかもクラウスを取り上げるところなど心憎いですね。彼のように聴き手の五感に直接訴えかけるような音楽をやる人こそ、頭でっかちな日本の聴衆に(あるいは古楽に変な先入観を持たない新規の聴衆に)もっと聴かれてほしいのですが…同じように頭の固い日本のマネジメントはいつになったら冒険をする気になるのか、相変わらず謎です(^_^;)
今後ともよろしくお願いいたします。
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>ゴン太くん
横笛のフルートは見た目が派手だし、技術的にも改良され大きな音が出るようになりましたが、私は素朴な音の縦笛も負けず劣らず好きなんです。名手が吹くと、誰もが学校で習うあのリコーダーでこんな演奏ができるのかと、本当に鳥肌が立ちました。よい年末年始を!
>lignpontoさん
そうですね。クリスマスはキリスト教のお祭りなので、「クリスマス・オラトリオ」、「メサイヤ」、その他の賛美歌も含めて、キリスト教に源を持つクラシック音楽が定番といえば確かに定番かもしれません。クラシック以外でも何かいいものが聴けたら、その時はまた書きたいと思っています。
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>Sonnenfleckさん
こちらこそご挨拶が遅れました。はじめまして。TBありがとうございます。アントニーニの新譜はベートーヴェンのシンフォニーですか!これはとても気になります。
>彼のように聴き手の五感に直接訴えかけるような音楽をやる人こそ、
まさにそれです!一流の音楽家の中には、録音でもある程度真価が伝わる人と伝わりにくい人がいると思うのですが、アントニーニは後者です。確かにCDで聴いても十分楽しいですが、アントニーニの音楽は視覚的に訴えてくる面もかなり大きいのです。彼のような音楽は、必ずしもかしこまったホールでなくてもよく、小劇場やライブハウスのような場所でやっても面白いのではないか、なんてことを思ったりもしてしまいました。日本ではこういうのあまりはやらないのでしょうかね。とにかく先入観なしで聴いてほしい音楽家のひとりです!