人間 – 空間 – 音楽

Kopischstraßeにて(12月10日)
ズビン・メータ指揮ベルリン・フィルのコンサートを聴いた(12月8日)。
聴き終わって、私にとってベルリンにいることの最大の喜びのひとつは、やはり劇場(広い意味での)に足を運ぶことだとの念を改めて強く思った。
久々にフィルハーモニーに足を運んでまず思ったのは、舞台がとても近く感じられるということだった。客席数約2400の大ホールにも関わらず、聴衆と演奏者との間に親密な空気が生まれやすい。それはもちろんこのホールを設計したハンス・シャロウンのコンセプトによるものだ。
劇場の「民主性」を重視したシャロウンは、客席が舞台を取り囲むアリーナ形式を採用し、ついには劇場の階級性の象徴である貴賓席をも奥の目立たない場所に追いやってしまった。だから、どこに座っても舞台との適切な距離感が保たれていて、自分がコンサートの場を形成する一員だと思うことができる。
演奏者が舞台に登場すると自然に拍手が起こる。これは当たり前のことだと思っていたが、先月日本で在京オケのコンサートを聴いた時はそれがなく、楽団員が淡々と舞台に現れて演奏が始まったので私は少々違和感を抱いてしまった。せっかく2000人近くの人々がこの2時間のために集まってきたというのに、なんだか醒めた雰囲気に感じられたのだ。ホールの構造上の違いにもよるものかもしれないが、私の中では最後まで舞台との距離感が縮まることはなかった。
久々にベルリンのお客さんの中でコンサートを聴いて、ああやっぱりこれだよな、と私は目から鱗が落ちる思いだった。ベルリン・フィルからアマチュアのコンサートに至るまで、こちらの人は音楽を自然に楽しむのがとてもうまいのだ。すぐれたホールと聴衆、そして音楽。この3つが常に影響しあっていることを、シャロウンは「人間、空間、音楽 (Mensch, Raum, Musik)」というホールの基本コンセプトで言い表した。
この日の演目は、ズビン・メータ指揮によるロシアプログラム。中国人ピアニストのランランがラフマニノフのピアノ協奏曲第3番で大トリを務め、ロシアの叙情を完璧なまでに歌い上げる。いずれも演奏がすばらしいのはもちろん、コンサートは聴衆との相互作用によって生まれるものだということを考えさせられた。
Berliner Philharmoniker
Zubin Mehta Dirigent
Lang Lang Klavier
Peter Tschaikowsky
Romeo und Julia, Fantasie-Ouvertüre nach Shakespeare
Igor Strawinsky
Symphonie in drei Sätzen
Sergej Rachmaninow
Klavierkonzert Nr. 3 d-Moll op. 30

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8 Responses

  1. nanacello
    nanacello at · Reply

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    ああ!マサトさんやっぱりコンサート行かれたのですね。笑。自分の方のコメントの返事に書いたのですが・・・チケット売り切れなのを知って、Ikeaにいました、笑。あまりチケット求めて行った友人も結局手に入らなかった、と嘆いていたので、Ikeaに行ってよかったです、笑。ランラン聞きにいかないでIkeaに行くのってどうなんだろう、と思いながらやめたんですけど・・・・。しかも、指揮がズビン・メータだったんですね!あー行きたかった!!!ま、ベルリンならまたすぐいいコンサートありますよね。ラフマどうでした??

    >コンサートは聴衆との相互作用によって生まれるものだということを考>えさせられた。
    まさにその通りだと私も思います。いい聴衆がいるからこそいいコンサートになるんだと思います。

  2. Sato
    Sato at · Reply

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    渋谷のお写真を「東京画」に例えてしまったSatoです。

    ベルリン訪問時にフィルハーモニーのガイドツアーに参加したのですが、どこの席からも舞台が近く感じられうらやましく思いました。

    >劇場の「民主性」を重視したシャロウンは、客席が舞台を取り囲むアリーナ形式を採用し、ついには劇場の階級性の象徴である貴賓席をも奥の目立たない場所に追いやってしまった。

    ガイドさんの説明では、シャルーンは元々貴賓席を設ける意思がなかったが、妥協し、舞台左側の最上部に貴賓席が設けられたということでした。
    興味本位で、貴賓席近くの場所まで移動してみましたが、音楽を聴く場所としては嫌がらせのような位置だったので、可笑しくなりました。まるで隔離部屋でしたから。

    BPO創立100周年演奏会での、カラヤンの「英雄」のDVD を見ても、シュミット首相やエリエッテ夫人は、貴賓席ではなく、一般席にいるのが見えますが、いったい、この「貴賓席」が本来の目的を果たすことがあるのでしょうか?(笑)

    おっしゃるように、日本のオケの演奏会では、団員の登場時に拍手がありません。外来オケですと拍手があるのに。不思議な習慣ですね。
    これからもコンサート報告よろしくです。

  3. nussdorf
    nussdorf at · Reply

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    いつも興味深い文章と美しい写真に感銘を受けています。今回、初めてベルリンへ足を踏み入れました。7日の同じプログラムを聴きに行きましたが、おっしゃるように奏者と聴衆の間合いが近いと感じましたし、リラックスした、温かな空気が満ちていると思いました。このような双方の温かなつながりが結果的に音楽の質を高めていくのでしょうね。Hamburgで聴いたNDRの演奏会でも同じことを思いました。あと印象に残ったのは、年配の方が多いこと(日本でもそうですが)、ランランさんの人気ぶり(人気、というより「愛されている」感じ)です。
    これからもベルリンの様々な姿をご紹介下さい。楽しみにしております。

  4. ausdrucksvoll
    ausdrucksvoll at · Reply

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    演奏者入場の際の拍手の話、とても同感です。自分が拍手をする側ではなくてされる側に回ったとき、即ち自分が舞台に上がったときに拍手をされていると、やっぱり嬉しいものですね。入場して直ぐに椅子に座らないで、立ってその拍手を受けている瞬間が結構好きだったりします(笑)

  5. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >nanaさん
    ベルリンに越して、充実した日々を送られているようですね。
    あのコンサートは早々売り切れでしたから、Ikeaに行ってよかったかもしれません(笑)。舞台裏のポディウム席もすぐになくなったとか。

    ランランはあの若さでもう完成されているなという印象も受けました。「あんなに楽々弾かれると、ピアノを弾くのがいやになる」なんて一緒に聴いた友達がこぼしていたくらいです。

  6. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >Satoさん
    フィルハーモニーについてお詳しいですね。
    いろいろ書いてくださりありがとうございます。

    何年か前、ベルリンフィルの元団員の方から招待券をいただいたことがあるのですが、それがあの貴賓席(Ehrenloge)でした。当日行ってみると、こんなところに貴賓席があったとかと思うと同時に、それにしては舞台から遠いなと思ったのですが、後になってその謎が解けました^^;)。あの席は元団員の方や家族などが利用していることが多いようです。元コンマスのシュヴァルベさんなども頻繁にお見かけしますから。

  7. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >nussdorfさん
    はじめまして!ご感想ありがとうございます。
    なんと、同じ日のコンサートにいらっしゃったのですね。
    ランランはポップスターのようだったでしょう(笑)。

    おっしゃる通り、ベルリンフィルのコンサートの年齢層は高く、特に正面のいい席は老人ばかりです。高齢化社会では、これはもうしょうがないことなのかもしれません。あとはいかに若い人も巻き込んでいくか、ですね。

    これからもよろしくお願いします。

  8. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >ausdrucksvollさん
    演奏者の側からしたら、やはりそうですよね!
    ベルリンの大学オケの本番とかでも、かしこまった日本のそれとは違い、お客さんの反応がとても大らかで演奏している方としても楽しんですよね。これはもう国民性の違いなんでしょうか?

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