『ベルリン 歴史の道』(平井正著。光人社)
東京の知人からいただいた本。平井正氏はベルリンについての著作をたくさん残しているので、一度読んでみたかった。これはドイツ統一直後の1992年にベルリンを訪れたときの記録だが、当時の自分を振り返るとそれほど昔の話ではないのに、写っている風景や街の描写も今とまるで違うのに唖然とする。氏の代表作であるベルリン三部作もそのうち読んでみたい。
『今日からデジカメ写真がうまくなる』(久門易。ソフトバンク新書)
これも知人からいただいた本。写真を撮るのは好きだけれど、知識はロクにない自分にとって、さらっと読めて得るところも少なくなかった。
「いい写真とは、写真に写っていない何かを感じさせることができるということです」
「うまい写真とは、写っているのが何か、はっきりわかる写真のことです。言い方を換えると、写真を撮った人が何を撮りたかったか―がはっきりわかる写真ということです」
シンプルな言葉だが、なるほどと思った。
『私塾のすすめ』(斉藤孝、梅田望夫著。ちくま新書)
「志向性の共同体」、「オープンにしたままで何かをし続ける強さ」・・・。梅田さんの本はブログを続けていく上で、いつも何かしらのヒントと力を与えてくれる。
『旅行記でめぐる世界』(前川健一著)
「戦後日本人を旅にかりたてた40冊とその時代」というサブタイトル。まだ読みかけだけど、なかなか面白い。戦後間もない頃、海外に出ようとしたらどれほどの手を尽くさなければならなかったか。実はボンボンだった三島由紀夫への筆者のツッコミには笑った。
『津軽』(太宰治著。岩波文庫)
太宰が生まれ故郷の津軽をどのような観点から描くのか興味があった。
私はこのたびの旅行で見て来た町村の、地勢、地質、天文、財政、沿革、教育、衛生などについて、専門家みたいな知ったかぶりの意見は避けないと思う。私がそれを言ったところで、所詮は、一夜勉強の恥ずかしい軽薄の鍍金(めっき)である。それらについて、くわしく知りたい人は、その地方の専門の研究家に聞くがよい。私には、また別の専門科目があるのだ。世人は仮りにその科目を愛と呼んでいる。人の心と人の心の触れ合いを研究する科目である。私はこのたびの旅行において、主としてこの一科目を追及した。(序編より)
自分がいつかベルリンについて1つのテーマでまとめるとしたら、何が「専門科目」になりうるだろうか・・・。
『ドイツ・バロックのシャンソン』(harmonia mundi)
ベルリン出身で、最近よく耳にするソプラノ歌手、アンネッテ・ダッシュによる2004年の録音。ベルリン古楽アカデミーが伴奏し、「愛」「無常」「平和」「自然」「幸福」という5つのキーワードで構成されており、ダッシュの多彩で軽やかな表現が楽しめる。この人は世代的にも自分と同じなので、何となく親しみを感じてしまう。ザルツブルク音楽祭の出演の合間を縫って、この日曜日にラディアルシステムで行われるはずだった彼女のサロンコンサートは、病気で中止になってしまった。聴きに行くつもりだったので残念。
『18世紀ドイツ《新世代》のフルート音楽』(Denon)
敬愛するフルート・トラヴェルソ奏者、有田正広さんの90年代初頭の録音。フリードリヒ大王、ベンダ、C.P.E.バッハから、ミューテル、アーベル、クラインクネヒトなど初めて聞くような名前の人のソナタまで。最初聴いたときは何て地味だろうと思ったが、いざ繰り返しかけると、聴くたびに味わいが増してくる不思議なディスク。こういうものが1000円で買えるってすごいと思う。
『シューマン:交響曲第4番 カラヤン指揮ウィーン・フィル』(DG)
カラヤン晩年の録音の大体は聴いたつもりでいたが、これは初めてだった。87年、ウィーンでのライブ録音。カラヤンの録音によくも悪くも見受けられる人工的な肌触りが、ここではほとんど感じられない。数ヶ月前、カラヤンの元でずっと演奏した音楽家から直接聞いた、巨匠晩年の姿と重ね合わせると、一層感慨が深まる。体の痛みを押して舞台に立ち続けたカラヤンが、ここではシューマンの音の奔流に溺れている様子が目の前に浮かんでくるかのようだった。立派な記録だと思う。
『プーランクの歌曲集 フェリシティ・ロット』(Decca)
近所の図書館でこのCDを借りてきて、プーランクのエスプリを楽しんでいる。ロットは最近、《トリスタン》の「愛の死」やマーラーのリュッケルト歌曲集をなんと弦楽四重奏とピアノの編成による編曲でCDを出した。この前Dussmannで少し視聴しただけだが、これが大そう美しかったので、お金ができたら買ってじっくり聴いてみたい。
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私も最近こんな本を読みました。
「写真がもっと好きになる」(菅原一剛。ソフトバンク クリエイティブ)
デジカメ歴1年ちょっとの私ですが「あなたの思いは、きっと写ります」のひとことに励まされました。
「津軽」は大好きな1冊です。また読んでみようと思っていたところでした。
以前読んだときは、乳母との再会場面で泣きました。
「女生徒」という短編も忘れられない作品です。
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>Tsu-buさん
>「写真がもっと好きになる」
ご紹介ありがとうございます。この本も面白そうですね。「ほぼ日」での連載だそうで、そういえば読んだことがあります。
>乳母との再会場面で泣きました。
あの場面は高校の教科書で最初に読んで、私もすごく印象に残っています。早くあのシーンを再読したくて、途中何箇所かはすっ飛ばしました(笑)。
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>Tsu-buさん
>「写真がもっと好きになる」
ご紹介ありがとうございます。この本も面白そうですね。「ほぼ日」での連載だそうで、そういえば読んだことがあります。
>乳母との再会場面で泣きました。
あの場面は高校の教科書で最初に読んで、私もすごく印象に残っています。早くあのシーンを再読したくて、途中何箇所かはすっ飛ばしました(笑)。
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マサトさん、平井正さんのベルリン三部作(「悲劇と幻影の時代」「虚栄と倦怠の時代」「破局と転換の時代」)、是非お読みになって下さい。これはもう大変な力作です。平井さんは膨大なデータを丹念に集められ、それらを駆使して刻々と状況が移り変わる両大戦間のベルリンの姿を「時系列」に沿った章を追って描いておられます。その内容は政治から芸術、文化、一般風俗に至るまで縦横かつ網羅的といってよいほどのものです。ただし相当に分量がありますので(3冊で約1,500ページ)、読み切るのには苦労しますがベルリン好きにとっては何かなんでも読まねばならない本だと思います。
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マサトさん、平井正さんのベルリン三部作(「悲劇と幻影の時代」「虚栄と倦怠の時代」「破局と転換の時代」)、是非お読みになって下さい。これはもう大変な力作です。平井さんは膨大なデータを丹念に集められ、それらを駆使して刻々と状況が移り変わる両大戦間のベルリンの姿を「時系列」に沿った章を追って描いておられます。その内容は政治から芸術、文化、一般風俗に至るまで縦横かつ網羅的といってよいほどのものです。ただし相当に分量がありますので(3冊で約1,500ページ)、読み切るのには苦労しますがベルリン好きにとっては何かなんでも読まねばならない本だと思います。
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もし平井さんのベルリン三部作に難があるとすれば、それは基本的に記述が「時系列」でなされているがために、「時間」と「空間(ジャンル)」のうち比較的自由に記述上で飛び越えられるのが「空間(ジャンル)」だけになってしまう点でしょうか。 この「時系列的」な記述によって読者の想像力の発揮に枠がはめられたような印象を持ちます。平井さんがこういう記述法を採用するのは平井さんが学者であることが背景にあるのかもしれません。この記述法が、この三部作をやや読みにくいものにしている可能性がなくもないようにも思われます。この三部作に書かれている情報は膨大、かつ貴重ではありますが、読者に対して忍耐を要求する点、やはり一般向きではないのかもしれません。
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もし平井さんのベルリン三部作に難があるとすれば、それは基本的に記述が「時系列」でなされているがために、「時間」と「空間(ジャンル)」のうち比較的自由に記述上で飛び越えられるのが「空間(ジャンル)」だけになってしまう点でしょうか。 この「時系列的」な記述によって読者の想像力の発揮に枠がはめられたような印象を持ちます。平井さんがこういう記述法を採用するのは平井さんが学者であることが背景にあるのかもしれません。この記述法が、この三部作をやや読みにくいものにしている可能性がなくもないようにも思われます。この三部作に書かれている情報は膨大、かつ貴重ではありますが、読者に対して忍耐を要求する点、やはり一般向きではないのかもしれません。
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マサトさんが上のような感じをベルリン三部作を読まれて持たれるとすれば、同じような対象を描いた以下の本をお勧めします。この本は平井さんの三部作に対してひょっとして持つかもしれぬ不満が完全に払拭されている本です。
「洪水の前に - ベルリンの1920年代」(オットー・フリードリク著 千葉雄一訳 新書館)
*原著 Before the Deluge : A Portrait of Berlin in the 1920s (by Otto Friedrich)
著者のオットー・フリードリクはタイム誌の編集長を務めたこともある人です。この人の「物書き」としての力量は大変なものです。ストーリーの展開力、表現の巧みさなどなど....。この本の記述は読み手の心の中にイメージを喚起させるすばらしい力があるように思います。両大戦間のベルリンを生き生きと描くことにおいて、この右に出る本は無いように思います。平井さんはこのフリードリクの著作について批判をしていますが、どうもそれはフリードリクの物書きとしての卓越した能力に対する嫉妬心からではないかと思われますね。
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マサトさんが上のような感じをベルリン三部作を読まれて持たれるとすれば、同じような対象を描いた以下の本をお勧めします。この本は平井さんの三部作に対してひょっとして持つかもしれぬ不満が完全に払拭されている本です。
「洪水の前に - ベルリンの1920年代」(オットー・フリードリク著 千葉雄一訳 新書館)
*原著 Before the Deluge : A Portrait of Berlin in the 1920s (by Otto Friedrich)
著者のオットー・フリードリクはタイム誌の編集長を務めたこともある人です。この人の「物書き」としての力量は大変なものです。ストーリーの展開力、表現の巧みさなどなど....。この本の記述は読み手の心の中にイメージを喚起させるすばらしい力があるように思います。両大戦間のベルリンを生き生きと描くことにおいて、この右に出る本は無いように思います。平井さんはこのフリードリクの著作について批判をしていますが、どうもそれはフリードリクの物書きとしての卓越した能力に対する嫉妬心からではないかと思われますね。
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>la_vera_storiaさん
いろいろとありがとうございます。平井さんのベルリン三部作の存在を知ったのが、やはりla_vera_storiaさんが中欧サイトに書かれていたブックリストによってでした。読まねばならない本ですね。とはいえ、日本に帰ったときに手に入れても持ち帰るのが大変ですし、ベルリンで読めるところがないかと願っているところです。いつか感想を書きたいです。"Before the Deluge"の方がずっと手に入れやすそうですね。la_vera_storiaさんのように横文字の本に強かったら、どんどん読み進めていくのですが・・・。
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>la_vera_storiaさん
いろいろとありがとうございます。平井さんのベルリン三部作の存在を知ったのが、やはりla_vera_storiaさんが中欧サイトに書かれていたブックリストによってでした。読まねばならない本ですね。とはいえ、日本に帰ったときに手に入れても持ち帰るのが大変ですし、ベルリンで読めるところがないかと願っているところです。いつか感想を書きたいです。"Before the Deluge"の方がずっと手に入れやすそうですね。la_vera_storiaさんのように横文字の本に強かったら、どんどん読み進めていくのですが・・・。