「ゲルマニア」の幻影

Kolonnenbrückeにて(2008年8月3日)
ベルリンでは何気ない場所にすごいものが存在するのだが、その例として、今日はこんなものをご紹介したいと思う。
それは、前回マレーネ・ディートリッヒの生家で紹介した「赤の島」とクロイツベルク地区がほぼ隣接した地点にあり、鉄道が走るコローネン橋からもこのように見渡せる。だが、画面中ほどの物体が目に入ったところで普通は通り過ぎてしまうのがオチだろう。もう少しそばに寄ってみよう。
これは、高さ18メートル、12.650トンのコンクリート製の円柱だ。1941年から42年にかけて建造されたという事実は、注目に値するかもしれない。
当時、第2次大戦はすでに始まっていたが、ヒトラーは第三帝国の首都ベルリンの改造計画、いわゆる「ゲルマニア計画」をまだ本気で夢見ていた。しかし、アルベルト・シュペーア設計によるモニュメンタルで巨大な建造物が、ベルリンの軟弱な地盤に耐えられるかどうか見極める必要があった。ヒトラーは、そのシュミレーションテストのために、Schwerbelastungskörperと呼ばれるコンクリート製のひたすら重い物体を作らせたのだった。
幸いにしてゲルマニア計画は実現に至らなかったので、この円柱がヒトラーの野望実現のため実際に造られたわずかな建造物の1つということになる(現在は文化財に指定)。ヒトラーはこれを眺めながら、パリの比ではない巨大な凱旋門や18万人を収容できるドーム型のホールをイメージし、妄想を膨らませていたのだろうか・・・。奇妙な感慨にとらわれる建造物だ。



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