『ドイツの原子力物語』(P.アウアー原著)

昨年末、日本のある新聞社のベルリン支局にお邪魔した時、たまたま本棚にこの本が目に入った。ちょっと気になる内容だったのだが、短い時間だったので貸してくださいとも言えずそのままになっていた。それから半年以上経ったある日、家のポストに小包が入っていて、空けてみたら何とこの本だった。送り手はベルリンの知り合いの方。その方の知人がこの本の翻訳をしたそうで、私が以前このブログで原爆について何かを書いたのを覚えており、「興味がおありのようなので」と送ってくださったのだった。ちなみに、その方には数年前何度かお会いしただけである。こういう目に見えないところでのつながりというのは、本当にありがたいと思う。
原題は「ダーレムからヒロシマへ」というドイツ語の本で、訳者は外林秀人と外山茂樹の両氏。そのうち外林氏はベルリン在住の化学者で、自身が広島の被爆者ということでお名前は存じ上げていた。たまに講演などもされているようなのだが、残念ながら私はまだ直接お目にかかったことはない。
この物語の核となっている人物は、1938年12月に核分裂を発見した化学者オットー・ハーンと研究員のフリッツ・シュトラスマン。そしてもう1人、リーゼ・マイトナーという重要な女性物理学者がいるのだが、彼女はナチスのユダヤ人迫害により、その時スウェーデンに亡命していた。話は20世紀初頭のマイトナーとハーンの出会いから始まる。最初は純粋な科学的真実の究明だったのが、いつの間にかマンハッタン計画と結びつき、ポツダム、そしてヒロシマへと至る過程が、わかりやすい言葉で書かれている。私はツェツィーリエンホーフ宮殿に比較的よく行くので、広島の原爆投下がアメリカ大統領のトルーマンによってポツダム郊外で決定されたことは知っていたが、その根本の原理であるウランの核分裂反応が発見されたのも、ベルリン南のダーレムであることは知らなかった。
ハーンとシュトラスマンが核分裂反応を発見したダーレムのカイザー・ヴィルヘルム化学研究所は、現在「オットー・ハーン会館」として残っているというので、場所を調べてみたら、このブログで何度か紹介しているイエス・キリスト教会から300メートルと離れていないことがわかった。記念碑も掲げられているらしいので、人類の歴史を変えたその場所を今度訪れてみたい。
「ドイツの原子力物語」-幕開けから世紀をこえて-
総合工学出版会

sponsored link



LINEで送る
Pocket



One Response

  1. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

    SECRET: 0
    PASS:
    しろうさん
    コメントありがとうございます。
    教えてくださったシーンは、この本のP147に「ボーアとハイゼンベルクの確執」というタイトルで載っていました。普通に読み流していたので、ご指摘ありがたかったです。しろうさんが関わられた作品で、この問題がどのように扱われたのか興味があります。しろうさんの演出作品をいつか観るのが楽しみです。

    kyunkyunさん
    はじめまして。
    「Basic Income」という言葉 、初めて耳にしました。
    ですので、ドイツ国内でどう受け止められているかはわからないのですが、『Bedingungsloses Grundeinkommen』というドイツ語は、今後新聞を読む際に注意してみようと思います。

Comment

CAPTCHA