昨夜、プラハから帰って来ました。考えてみたら、昨年末に日本に帰って以来、プライベートな目的でベルリンを離れるのは今年初めてかも。やはり旅はいいですね。異国の街を歩くと必ず新しい刺激を得て帰途につくことになります。隣国のチェコとはいえ、今回もそうでした。
さて、この旅でいろいろ書きたいことはあるのですが、まずはおいしかった話から。ワタシ的には何といっても、「黄金の虎」(U Zlateho Tygra)でピルスナーを飲んだこと、でしょうか。もう何年も前に、千野栄一氏の『ビールと古本のプラハ』(白水Uブックス)を読んで、そこに何度も登場するこのビアホールの存在が気になって仕方がなかったのですが(おそらくビール好きなら、これを読めば誰しもそう感じるはず)、ようやく念願が叶いました。
といっても、「今回どうしても」という強い気持ちは持たないようにしていました。『ビールと古本のプラハ』を読んだ限りでは、この店はいわゆるシュタムガスト(常連客)でほとんどの席が埋められており、観光客がのこのこ出かけて行っても飲めるとは限らない、という感じだからです。なので、ときめく気持ちをどこかでセーブし(笑)、土曜日の夜、密やかな期待を胸に足を運んでみました。
「黄金の虎」は、フス通り(Husova)という、有名な天文時計のある広場の裏手の小さな通りにありました。昼間もその前を通ったはずですが、全然気付かなかったほど地味な構えです。中に入ってみると、意外なほどこぢんまりしている。当然満席で、すごい熱気です。目の前の壁には、この店の中で作家フラバルとクリントン元大統領(その間にはハヴェル元大統領)が握手をしている、千野さんの本にも載っている写真が飾られていました。作家から大統領まで、あらゆる人々がここに集まってビールを飲み、談義に花を咲かせてきた、そういう店なのです。
黙々とビールを運び続ける年配のおじさんと目が合い、「立ち飲みでもいいので、1杯ここのビールを飲ませてくれないかなあ」というゼスチャーをしたのですが、ちょっと渋い表情。これは難しいかなと思いつつも、入り口近くでしばらく待っていたら、ものの5分ぐらいでしょうか。おじさんがこちらを向いて、「ここの角が空いているから座りな」と長テーブルの一番奥を指差してくれました。いやあ、ありがたい!私たちは、地元の4人組の女性がカード遊びをしている横に座りました。
「まずはメニューを見てから決めよう」とカフェや飲み屋での普段の感覚でいたら、突然目の前にビールジョッキが2つどすんと置かれました。一緒に行った妻はほとんど飲めないのですが、もう有無を云わせない感じ(笑)。周りを見ると、食べている人もいますが、ほとんどの人はビールを飲んでいるだけです。
「黄金の虎」で出しているビールは、ドイツでもよく知られている「ピルズナー・ウアクヴェル」。私自身たまにスーパーで買って飲んでいるので、味の想像は大体つくのですが、ここで飲んだのはまったく別のものではないかと思うほどでした。まずびっくりしたのは、泡のきめの細やかさ。よほど注ぎ方がうまいのか、ビールの管理状態がいいのか、おそらくその両方なのでしょう。いろいろなビールを飲んできましたが、泡で感心したことなどそうありません。やがて絶妙の冷え加減で喉を流れていく黄金の液体。これはもう格別でした。「ピルズナー・ウアクヴェル」は、どちらかというと苦みが効いた印象があったのですが、飲んでいる最中、苦みを感じることがほとんどなく、実に清冽ですがすがしい味わいです。ミュンヘンで、「これはうまい」と思ったヘレスをさらに上回る体験でした。
周りを見ていると、ジョッキが空になったら、ほぼ自動的に(?)ビールが運ばれてくる仕組みになっているようで、その度におじさんは机の上の白い紙に棒線を引いていきます。妻もこのおいしさはわかったようですが、結局私がほとんど2杯飲んで、もうお腹いっぱい。ちなみに、ビール1杯40コルナは約200円。プラハの旧市街ではもう他になかなかお目にかかれない安さではないでしょうか。店内の煙草の煙がちょっときつかったのが唯一の難ですが、芸術品とも言える偉大なビールに出会えて大満足の一夜でした。
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ここ数年プラハと御無沙汰しているのに、朝からこんなイケナイ写真を見せられては、仕事になりません(笑)。「金の虎」のビールは、無類の旨さですね。ところで、つまみを食べましたか?ジャガイモの衣で揚げた豚肉とか、ビールを飲むためだけに考えられた強烈な匂いのチーズとか…今回のがしたのなら、また行かないといけませんよ(笑)。
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わたしも千野栄一氏の同著作を読んでトライしてみましたが、満席であえなく撃沈。
未だ金の虎では飲んでいません。実にうらやましい。
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私もウアクヴェル大好き!
この前フィルハーモニーへ行ったら休憩中に生が売っているのを発見!速攻飲みました。生は瓶と比べ物にならない程おいしかったです。
今度探してみてください。
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焼きそうせいじさん
ご無沙汰しております。久々のご登場うれしく思います(そう言えば、もう1人の常連la_vera_storiaさんは最近お元気でしょうかね)。
>ジャガイモの衣で揚げた豚肉とか、ビールを飲むためだけに
>考えられた強烈な匂いのチーズとか…
これは知りませんでした。ビールと一緒に食することを考えただけで、思わずごくり。いつかぜひ再訪したいです。
久々にプラハを訪れましたが、やはり中欧の奥深さを体感できる町ですね。ベルリンから5時間弱、交通費もそれほどでないので、また機会を見つけて行きたいです。10月にマッケラス指揮チェコフィルが、シンフォニエッタと女狐のフィナーレを演奏するコンサートが気になっています。
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ウメさん
ウメも行かれたんですか。でも残念でしたね。他の方のブログで知ったのですが、15時の開店直後に行くのが結構チャンスらしいです。
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ねむこさん
フィルハーモニーでウアクヴェルが飲めるとはすごいですね!ぜひ試したいところですが、コンサートの休憩中に飲むのはトイレの関係でちょっと危険かも・・・
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マサトさん、こんにちは。
御無沙汰していますが、≪テレビでドイツ語≫のテキストの
マサトさんの文章、毎回楽しみに拝見しています。
今回の≪エーミールと探偵たち≫のルート、あのコースをたどるのも
私の憧れの一つです。
さて、この≪黄金の虎≫。
マサトさんのブログを読みながら相槌をうっています。
私も千野先生の≪ビールと古本のプラハ≫を何度読んだことでしょう!
初めてのプラハでは物おじして入れませんでしたが
去年プラハに行った時は意を決して入りました。
でも、マサトさん同様、店主に難しい顔をされ
やはりマサトさん同様、「立ち飲みでもいいので・・・」とお願いしました。
ダメかなーと思ったのですが、席を一席空けてもらい
憧れの黄金の虎のピルスナーを飲むことができました。
確かにおいしかったのですが
小心者の私は非常に緊張してて、よく覚えていないのです。
2杯グググと飲み、フラバルの像をしげしげと見つめて
店を出ました。
心地よい威厳のある店でした。
緊張しましたが憧れのお店でのビールは感無量でした。
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しゅりさん
こんにちは。「テレビでドイツ語」の連載を読んでくださっているそうで、ありがとうございます。
しゅりさんの「黄金の虎」体験、今拝見しました。自分が行った時と状況が似ていて、いろいろ共感できましたね。確かに飲み屋に入る時に、あんなにドキドキしたのも初めてだったかもしれません。「心地よい威厳のある店」、まさにそんな感じでしたね。いつになるかわからないけど、絶対また再訪したいお店です。