ペルガモン博物館のパノラマ展

巨大なガスタンクを思わせるパノラマ展の仮設会場
ペルガモン博物館の歴史は1864/65年冬、ドイツ人技師カール・フーマンがトルコのベルガマを初めて訪れた時にさかのぼります。彼は、古代都市の廃墟の大理石が雨風にさらされ、また地元民による遺跡の略奪が横行していたことに衝撃を受けたそうです。やがてフーマンがベルリン博物館の館長アレクサンダー・コンツェの支援を得て、さらにトルコ政府から発掘権を獲得したところで、1878年から3期に及ぶ大規模な発掘作業が始まりました。中でも、数世紀もの間、人々から忘れ去られていた大祭壇や、ギリシャ神話の神々と巨人族との戦いを描いたフリーズはまさに世紀の大発見で、ベルリンに運ばれた後、同博物館に再構築されたことは誰もが知るところです。この前に立つと、大祭壇の威容とヘレニズム芸術の極致を示すフリーズの彫刻の美しさはもちろん、古代文化の発掘と復元に捧げた人々の熱意に圧倒される思いがします。
パノラマ展内部のイメージ図 © asisi
2011年秋、全く新しい形で古代ペルガモンが私たちの前に立ち現れました。現在、博物館の中庭に高さ27.5メートルの円柱の塔が立っており、これが特別展「ペルガモン―古代首都のパノラマ」の会場です。階段を上って行くと、天辺が展望台になっており、眼前に広がる360度の古代ペルガモンの大パノラマに息を呑みました。
仮設のやぐらから撮影した現在のペルガモンのパノラマ © asisi
このプロジェクトの総責任者は、建築家で芸術家のヤデガール・アッシジです。アッシジはトルコのベルガマに足を運び、丘の上のペルガモン遺跡を一望できるポイントにやぐらを建て、無数の写真を撮影。現実の風景をベースに、過去に発掘された遺跡や最新の考古学研究に基づいて1つひとつのディテールをはめ込んでいきました。また、別に撮影された群衆シーンもパノラマ上にデジタル加工。その結果、西暦125年4月8日、ローマ皇帝のハドリアヌスが訪問したペルガモンの1日の様子が、この上なくリアルに再現されることになったのです。
パノラマ台から眺めると、あの壮麗な建築群がいかに厳しい地形の上に建てられていたかを実感できます。目の前にアテナ神殿がそびえ、その左の円形劇場では群衆がハドリアヌス帝を待ち受けています。右手には、かの大祭壇が! 大理石のレリーフが当時はいかにカラフルだったのかも分かりました。背景から流れてくる街の雑音や人々の歓声といったサウンド効果も、古代ペルガモンにいる気分を高めてくれます。
本館で開催中のもう1つの特別展や常設展を併せて見学すれば、古代都市を一層スリリングに感じられるでしょう。2012年9月30日まで開催。
www.pergamon-panorama.de
ドイツニュースダイジェスト 11月18日)
ペルガモンの大祭壇



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3 Responses

  1. MAYU
    MAYU at · Reply

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    パノラマ展、いいですね。
    私は塩野七生の「ローマ人の物語」を読んで以来、ハドリアヌス帝が治めていた頃のローマに行きたい、と思っていたんです。
    日本でもやらないでしょうね。来年の9月までかあ。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    MAYUさん
    塩野七生さんの本はほとんど読んだことがないのでコメントできないのですが、ハドリアヌス帝下のローマをきっと生き生きと描かれているのでしょうね。読んでみたくなりました。アッシジ監修のパノラマ展には、確か古代ローマもあったと思います。

  3. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    mme.maccabeeさん
    大変ご無沙汰しております。コメントありがとうございました。
    確かに、このペルガモンの現在のパノラマを眺めると、見事なまでに土台部分が残るのみですよね。ペルガモンにもミレトスにも行ってみたいけれど、「博物館で見て楽しむので十分なのでは、いやそれでもいつか行ってみたい」という両方の気持ちで揺れ動きます。
    ペルガモン博物館は確か再来年ぐらいから大改装に入るので、それまでがチャンスかもしれません。またいらしてくださいね。

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