ポツダム・サンスーシ音楽祭2012より(2) – 宮廷劇場 –

Neuen Palais Potsdam (2012-06)
ベルリンからの日帰りでポツダムを観光しようとすると、多くの旅行者は2大名所のサンスーシ宮殿かツェツィーリエン宮殿、もしくはその両方に行くだろう。両者は離れている上、その間の公共交通の便がよくないので、それにプラスして旧市街を少し見れば1日はあっという間に終わってしまう。ポツダムに泊まってまで見る人は少ないので、サンスーシ公園の奥まった場所に位置するこの新宮殿まで来るのは、どうしてもポツダム訪問が2回目以上の人になってしまう。
よく言われるように、新宮殿はフリードリヒ大王が7年戦争の勝利で得た富で建てられただけあって、サンスーシ宮殿に比べると遥かに大規模な造りになっており、一見の価値はある。私はまだ観に行けていないのだが、ここで開催中の生誕300周年の展覧会「FRIEDERISIKO」は、連日盛況だそうだ(10月28日まで開催)。
この新宮殿の一角にSchlosstheaterと呼ばれる宮廷劇場がある。ここを右に曲がると、劇場の入り口が見えてきた。
ポツダムの宮殿群は幸い戦災から免れたので、この宮廷劇場も18世紀の建設当時の内装をほぼそのまま残している。私にとって一つの憧れの場所だった。今年のサンスーシ音楽祭では、フリードリヒ大王が台本を書き、グラウンが作曲したオペラ《モンテズマ》(1755年初演)が上演されるというので、とりわけ楽しみにしていたのだ。
初めて中に入った劇場は、想像していたよりも豪華絢爛な感じではなかった。とはいえ、ドイツに現存する18世紀のロココ劇場としては貴重なものに違いない。このクモの巣をモチーフにした装飾などを見ると、私は自然とサンスーシ宮殿の音楽室を連想してしまう。
ここにはもうかなりの回数来ているが、毎回入る瞬間、私はかつてこの空間で奏でられたであろう音楽を想像して、ひと時の夢心地を味わう。C.P.E.バッハ、グラウン、クヴァンツ、ベンダ、そしてもちろん大王自作のフルート協奏曲…(もっとも、かの大バッハがポツダムの大王を謁見したとき、サンスーシ宮殿はまだ完成していなかった。そしてモーツァルトがポツダムを訪問したとき、大王はもうこの世にいなかった。歴史の因果にも思いが至る)
この日はマチネーで、ポツダム・カンマーアカデミーの演奏で、《モンテズマ》が上演された。指揮者のSergio Azzolini氏は、通奏低音のファゴットを奏でながら、時に楽器を指揮棒のように動かして、リードを取る。このオペラの音楽的価値がどれほどのものなのかは正直よくわからないけれど、コロラトゥーラの超絶アリアがたっぷりで、ときには客席から歌手が現れたりと、なかなかにスペクタクルな舞台だった。
そうそう、ここで初演された名作に、メンデルスゾーンの《真夏の夜の夢》がある。前回お話ししたフリードリヒ・ヴィルヘルム4世の治世の1843年10月14日、ここで初めて劇音楽の完全版が奏でられたのである。あの完璧無比の序曲、夢幻的なスケルツォ、そして結婚行進曲…その日、客席には、アレクサンダー・フォン・フンボルトやフェルディナンド・ヒラー夫妻もいたという。タイムマシーンがあったら…ではないが、ポツダムの宮廷と音楽をめぐるテーマは、興味が尽きない。
追記:最近発売されたエマニュエル・パユがフルートを吹いた映像作品「フリードリヒ大王に捧ぐ~サンスーシのフルート協奏曲集」は、新宮殿の宮廷劇場で撮られたものだ。なぜか「サンスーシ宮殿で収録」となっているけれど…

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