東日本大震災から3周年の昨日、ベルリンの日本大使館の前で小さな祈念行事が行われるというので、足を運んできました。主催の「絆・ベルリン」はこれまで数度に渡って岩手県大船渡市を中心にボランティア活動を行ってきたNPO法人。キャンドルを灯して、地震が起きた時刻に黙祷。犠牲者の方々に哀悼の気持ちを表し、復興を祈念しました。
家に戻ってから、一昨年の5月に大船渡や陸前高田を訪ねたときの写真を久々に眺めながら、当時を振り返っていました。ブログの旅行記は、被災地のことを書くことの難しさを実感する機会もあって、最終日だけ書かないまま時間が過ぎ去っていました。もう2年近く経ってしまいましたが、あの旅でお世話になった方々を想いながら、綴ってみたいと想います。
2012年5月20日(日)、泊めてもらった大学時代の友人に連れられて、仮設の飲食店街で昼食。その後、市内のリアスホールという文化会館へ行く。大ホールでは確かお笑い芸人によるモノマネショーが行われていたが、私たちは貸スタジオの方へ。もともと友人とは大学時代のオーケストラで知り合い、彼はオーボエ、私はフルートを吹いていた。2人ともまだ細々と演奏活動を続けていて、友人は休みの日にここに来ては楽器を吹いているのだそうだ。この日は1時間半ぐらい、コピーして持ってきたバッハの譜面を何曲か吹いて遊んだ。一緒に吹くのはかれこれ大学生以来だったから、なかなか新鮮な時間だった。
心理カウンセラーとして地元の学校で仕事をしている友人は、日頃の激務もあって一旦アパートに戻る。私は少しでも大船渡の街を歩きたいと思い、そこから港の方に向かって散策することにした。途中、JR大船渡線のレールとぶつかる。大船渡の盛から北に延びる三陸鉄道がドラマ「あまちゃん」などの影響で脚光を浴びたとのとは対照的に、大船渡線の盛-気仙沼間は復旧の目処がまったく立っていないという。最近の記事をいくつか読むと、復旧に向けた話し合いが持たれているようではあるが、費用やルート変更などの多くの問題が積み重なっている。
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「かもめの玉子」で有名なさいとう製菓の本社だった建物。震災直後、社長がこの高台から撮影した津波の映像が忘れられない。市内にさいとう製菓の仮設店舗があり、そこでお土産を買って帰ることに。
リアスホールが結構賑わっていたのに対して、私が歩いた道沿いで人とすれ違うことはほとんどなく、周囲は静寂が支配していた。
あのときお世話になった方々やその前日の運動会で出会った人々はいまどうしているかなと思う。夜、「やまちゃん」という居酒屋でおいしいちらし寿司を食べてから、友人に見送られ東京行きの夜行バスに乗り込む。少し寝て、どのぐらい経った後だろうか。目が覚めて窓の外を見たら、陸路にいるにも関わらず目の前に巨大な船がどんと横たわっている。私は突然SF映画の世界に紛れ込んだような超現実的な感覚に襲われたが、すぐに正気に戻った。テレビや写真で何度も見た、気仙沼市鹿折に打ち上げられた第18共徳丸に間違いなかった。今どうなっているのかと思って調べてみたら、昨年夏からの撤去作業が終わり、すでに4ヶ月が経ったそうだ。
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昨日の祈念行事の最後に、「絆・ベルリン」の福澤啓臣さんが「これからも息長く被災地を支援していきましょう」と呼びかけた。数は減ってきたけれども、「絆・ベルリン」や柏木博子さんが主催する震災孤児を支援するNPO”KIBOU“などは、被災地の支援を今も継続的に行っている。距離は大分離れているが、ベルリンとこの風景とはどこかでつながっていると思いたい。そして、いつかまた大船渡や陸前高田をゆっくり訪ねたいと思う。