(前回の続き)
4時間かけてリューゲン島の東端にあるビンツに到着した翌日、宿から近い海岸に行ってみることにした。私たちが訪れた9月半ば、すでにバカンスシーズンは終わっていたが、メインストリートはそれでも結構賑わっていた。海岸に出ると無数のStrandkorbと呼ばれるビーチチェアが並び、バルト海の保養地の典型的な風景が広がる。ビンツの海水浴場はリューゲン島の中でももっとも規模が大きいそうだ。海を見るのはその数ヶ月前に横須賀の海を見て以来だったので、心が少しときめく。
メインストリートの先には、Seebrückeと呼ばれる木製の橋が延びている。長さ370メートルあるこの橋は1994年に再建されたもので、リューゲン島の海岸に架かる橋の中では2番目の長さだそう。海風を感じながら大海原の上を歩くのは気持ちよかった。
桟橋の近くにはお城のようなホテルも建っている。ビンツが保養地として整備されていくのは、海水浴場で過ごすバカンスがブームになる19世紀末から20世紀初頭にかけてのこと。前日の列車の中で同じコンパートメントに座ったおばさんが教えてくれたように、ナチス時代にはビンツの北側のプローラに労働者のための巨大な保養施設(通称KdF)が建設されたが、第2次世界大戦の勃発によって完成することはなかった。ビンツまでの鉄道路線が延びたのもちょうどその頃(1939年5月)。
こちらがメインストリートのハウプト通り。レストランやカフェが多く並び、長期で滞在する人を意識してか、パン屋なども充実していた。普段住むベルリンと違うのは、数日間の滞在中、外国人にほとんど出会わなかったことだろうか(夏のバカンスシーズンはまた違うのかもしれないけれど、ドイツ人の割合が圧倒的に高いのは確かなようだ)。
メインストリートの北側はStrandpromnadeという遊歩道になっている。カフェでしばしくつろいだ後、砂浜に行ってみた。
静かに佇むビーチチェアは少々もの悲しさを感じさせたけれど、さらさらした白い砂浜はきれいだった。
海の街に来たらやはり新鮮な魚料理を食べたくなるものだが、これがなかなか難しい。ドイツの魚料理はクリームベースの味付けで出されることが多く、素材がよくても(今までの経験上)味は似たり寄ったりになりがちなのだ(その点、イタリアなどに行くと、基本塩味をベースに素材を生かした形で食べさせてくれるから、日本人の口にもよく合う)。そんな中、Strandpromnadeに面したWeltenbummler(世界漫遊者)というレストランは当たりだった。私が食べたScholle(カレイ)のグリルは、付け合わせのジャガイモに至るまで、どれも美味しかった^^。
さて、バルト海の海水浴場に来たからには、やはり「名物」のビーチチェアを体験してみたい!そんな思いで最終日のお昼、写真左上に見える売店に行くと、壁に料金表が貼ってあった。1日10ユーロ、14時以降は8ユーロ、1時間2.5ユーロ、1週間60ユーロ……。
1時間でも借りられるのかと思い、帰りの列車に乗るまでの時間を利用してレンタルしてみることにした。5ユーロのデポジット代を含めたレンタル料を払い、鍵を受け取る。その鍵で木のふたを外すと、2人がけのチェアーを利用できる仕組み。肘掛け部分には折りたたみ式の小さなテーブル、さらに足置き台まで付いていて、なかなかいいぞ^^。
椅子に腰掛けてみると、目の前にこんな眺めが広がる。バカンスでリューゲン島に来るドイツの人たちは、ここに座って本を読んだり、泳いだりしてのんびり過ごすのである。そんな過ごし方も悪くないなあと、やや後ろ髪を引かれる思いでベルリン行きの列車が出るビンツの駅に向かった。
リューゲン島の旅行記はもう1回続きます。