ベルリン生活は家探しから(2)

Deutsches Theater前にて(11月3日。この木は黄色だけでなく、赤く紅葉した葉も混じっていて、日本の紅葉を少し思い出しました)
(前回の続き)
ベルリンに着いて数日後、家探しを始めた私が、知り合いからの情報を頼りに採った方法は大まかにいって以下の通りであった。
(1)新聞の広告で探す
ベルリンの日刊紙の土曜版には、不動産情報が別冊で付いてくる。物件は地区ごとに分けられていて、小さな文字でぎっしりと書かれているのだが、略語が多く、いきなりそれを見ても何のことだかよくわからない。例えばこんな具合だ。
Prenzlauer Berg Metzer Strasse, AB, ZH, möbl., EBK, Balkon, ruhig, hell
ABというのはAltbauの略で、主に第二次世界大戦前に建てられた古いアパートのこと。これに対して、戦後造られたアパートはNeubauと呼ばれる。Neubauのアパートは鉄筋コンクリート製が主流で、日本のアパートと見た目はそれほど変わらない。私はベルリンに来た直後、たまたま知り合った日本人留学生のAltbauのアパートを見せてもらったのだが、天井が高く、美しい彫刻も施されていたりして、そのゆったりした部屋のつくりにすっかり魅了されてしまった。ベルリンでせっかく住むのならAltbauがいいなと心の中では思っていた。
ZHというのは、セントラルヒーティング(Zentralheizung)のこと。冬場が長いベルリンでは、暖房は死活問題だ。旧東の方に行くと、Kohleheizung(石炭暖房)式のアパートも残っているので、注意が必要。
ちなみに、”möbl.”は「家具付き」、EBKは「システムキッチン(Einbauküche)」、”ruhig, hell”は、「静かで日当たりがいい」ということ。
(2)大学の掲示板で探す
ベルリンには、自由大学(FU)、フンボルト大学(HU)、工科大学(TU)の3つの総合大学があるのだが、それぞれの大学の学食の近くに行ってみると、このようにぎっしりと広告で埋め尽くされている掲示板をよく見かける。「楽器を教えます」とか語学コースの案内などもあるが、その多くはアパートに関するものだ。1人用のアパートの他、WG(Wohngemeinschaft)と呼ばれるルームシェアするアパートの同居人募集の広告も多い。ドイツ人とのWGだったら、何よりドイツ語を話す機会が増えるし、困った時にはすぐ聞ける相手がいるというのは見逃せない利点だ。ただ、WGの生活が楽しくなるかどうかは、相手との相性によるところが大きいのは言うまでもない。後に私は1年半のWG生活も経験したのだが、やはり一長一短はあると感じた。
いろいろ調べていくうちに、ベルリンの地区ごとの大まかな特色もわかってきた。例えば、Prenzlauer Bergはオシャレな店が多く学生に人気。Weddingは外国人が多く家賃も安いが、雰囲気はあまりよくない。ZehlendorfやDahlemは高級住宅地が多い、などなど。
(3)学生寮を探す
私は学生寮でもいいと思っていた。何より安いし、家具などを揃える必要もない。しかし、TUにある学生センターのようなところに行って聞いてみたら、学期が始まる直前になっていたこともあって、もうベルリンの郊外の寮しか空いていないとのことだった。私はできることなら大学からそう離れていない場所に住みたかった。日本での学生時代、片道約2時間かけて大学まで通っていた私としては、家賃もそれほど高くないベルリンでは街中に住んでみたかったのである。
今だったら他にネットで探すなどの方法もいろいろあるだろうが、当時は何も知らなかった。私は主に(2)の方法を試みたが、ドイツ語もままならない自分が、いきなり知らない人に電話をしてアポを取るというのはなかなか大変なことだ。実際にいくつか物件も見たが、あまりピンとくるものがなかった。
そんなこんなでYH住まいになってから10日近くが経ち、そろそろ焦りの色が見えてきた頃、誰から聞いた話だったかもう忘れてしまったのだが、FU(自由大学)の外人局に行って聞いてみたらどうかとアドバイスをしてくれる人がいた。
翌日、早速そこに行って相談してみると、おそらく大学に直接届けられたと見られるアパートの同居人募集のリストをくれた。私はそれを見て、2つのアパートを見に行くことにした。1つは、いわゆるNeubauのアパートであまり気に入らなかった。
結局今回もだめかなと思いながらも、私はもう1つのアパートを見に行った。場所はティーアガルテンのほぼ南の端。1998年に、私が初めてベルリンに来た時によく歩いた運河沿いの通りにあった。フィルハーモニーや新ナショナルギャラリーからも程近い。そのアパートは中庭にあるという。通りに面した建物をくぐって、中庭に抜けて歩いて行くと、アパートが目の前に姿を現した。その時の驚きは今でも忘れることができない。
(つづく)



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2 Responses

  1. ヒッシー
    ヒッシー at · Reply

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    彼是シュテュットガルトに2ヶ月。。このままドイツに居つきそうな気配だ。近所の本屋に言っても、日本語の本はおろか、英語さえあまりないですねえ。でも村上春樹はよく売られてるね。ドイツ語版で挑戦するかな。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    お元気そうで何よりです。海外に住んでいて恋しくなるのは、何といっても日本食と日本語で書かれた本。嗚呼、これだけは何年経っても変わらないでしょう。村上春樹は、「国境の東 太陽の西」をドイツ語で少し前に読んだことがあります。ドイツ語版のタイトルはなぜか「危険な愛人」なんですが・・「ノルウェーの森(ドイツ語版は「ナオコの微笑」)」は読みかけたままほったらかしにしてあります。

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