4年前、初めてイタリアのヴェローナを訪れた時の印象は今でも忘れられない。
ちょうど日本から母親が訪ねていて、ベルリンを案内した後、プラハ、ミュンヘンを通って列車でイタリアに入り、ヴェローナで後からやって来る弟と合流するというプランの旅行の最中だった。2002年は真夏だというのに妙な天気が続いていて、特に8月11日のプラハは朝から雨が降ったり止んだりと何かがおかしかった。後になって知ったことだが、実はこれこそが、この夏ドレスデンに代表される中央ヨーロッパを襲った大洪水の序章なのだった。私たちは翌12日早朝にプラハを発ったためこの難を逃れることができたが、あと1日遅れていたらプラハで足止めをくらっていたかもしれない。しかし、この後のミュンヘンも天気はすぐれず、せっかくの旅行だというのに私の気分はどうも晴れなかった。
13日の朝(まさに4年前の今日だ)、列車でミュンヘンを発つと空は徐々に晴れ間が覘くようになった。インスブルックを越えると、有名なブレンナー峠越えに入る。ここからの車窓は欧州でも屈指のものに数えられるだろう。雄大な車窓を楽しんでいるうちに、いつの間にか天気は快晴になっていた。昼の1時過ぎ、ヴェローナのポルタ・ヌオーヴァ駅に列車が到着すると、私の気分まで晴れ晴れとしているのを感じた。足どりも軽く旧市街に向かって歩き、アレーナ前の広場で弟と無事に合流。中世の面影の残るヴェローナの町には全てにおいて色があった。オレンジ色に統一された屋根の色、バラエティーに富んだ建物のカラー、バルコニーに飾られた色とりどりの花々、真っ青な空に加え、街中の至る所で聞こえてくるイタリア語の響きの明るさ!
ドイツとは異なる文化圏に入ったということ、大げさに言うならば全く別の世界に来てしまったということをこの時ほど鮮やかに実感したことはない。「イタリア紀行」は読んだことがないけれど、ゲーテがブレンナー峠を馬車で越えてヴェローナに入った時の感動はどれほどのものだっただろうか。21世紀の今、格安航空券でどんなに安く行けるようになっても、ドイツ人のイタリアへの憧れは変わることがない。おそらくこれからもそうだろう。
さて、8日の19時頃私は再びポルタ・ヌオーヴァ駅に降り立った。4年前と違って天気はあまりよくなかったが、この晩町を歩いて撮った写真を何枚かご覧いただくことにしよう。
古代ローマ時代の橋、ピエトラ橋(Ponte Pietra)を渡って旧市街に入る。
ローマ時代の公共広場に起源を持つエルベ広場(Piazza delle Erbe)。昼間はマーケットが立ち並ぶ活気のある広場だ。
中央にダンテ像が立つシニョーリ広場(Piazza dei Signori)
ジュリエッタの家(Casa di Giulietta)の前は、この時間でも人通りの絶えることがない。奥に光っているのがジュリエッタの像。世界中からのカップルが書いたと思われる落書きにもご注目を。
ヴェローナの風物詩といったら、アレーナ(1世紀に建てられた円形劇場)で毎夏行われるオペラ祭だろう。この日の演目は「カヴァレリア・ルスティカーナ」だった。この劇場の昼間の様子はまた別の機会に。
(つづく)
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こんにちは!ブレンナー峠を越えてフォルテッツァを抜けた墺領東チロルに近いトブラッハという村はマーラーが後期の交響曲を書いたところで、私もそこで吹いたことがありますが本当に絶景ポイントだと思います。
先日写真のアレーナのような古城のステージで「ナブッコ」を吹きました。この時期の野外オペラは特に雰囲気が出て演出効果抜群だと思います。
いつかイタリアも旅したいです。
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冒頭の花の鮮やかさ、いいですね。
普段ベルリンに御住まいなので、今回のイタリアは、
まさにゲーテのイタリア紀行とダブりますね。
思わず、本棚の片隅にあったイタリア紀行を手にしてみました。
私もいつかイタリアに行ってみたい。
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ご無沙汰しております。楕円球です。
nozomuzさんのご意見に全面同意です。
実に鮮やかで素敵な写真ですね。
自分がヴェローナを訪れたのは1997年の8月、暑い日でした。StuttgartからMuenchen経由、ブレンナー峠を越えていったのですが
記事にもありますが、まさに電車の車輪のひと転がりごとに、「イタリア」が接近してくる実感がありました。今日の記事で、そのときのことをまた思い出しました。ありがとうございます。
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ヴェローナについては、初耳でしたので勉強になりました。
イタリアもいつか行ってみたいですね。
食べ物もおいしそうだし、女性も綺麗だし。
もしかしたらイタリア語がダメでも英語とエスペラントで旅行ならなんとかならないでしょうか??
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>ausdrucksvollさん
>トブラッハという村はマーラーが後期の交響曲を書いたところで
ひゃーそうなんですか。さぞかし美しいところなのでしょうね。いつか訪ねてみたいです。ブログを拝見しましたがすごい体験をされたのですね。あのGK氏と共演されたとか!またいろいろなお話を聞かせていただけるのを楽しみにしています。
>古城のステージで「ナブッコ」を吹きました。
これも素敵ですね。私もアレーナではありませんが、ヴェローナで野外ステージを楽しみました。
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>nozomuzさん
「イタリア紀行」はドイツ語版の抜粋が手元にあるので、ヴェローナの項だけでもめくってみようかと思います。ベルリンは肌寒い毎日でイタリアの太陽が早くも懐かしいですね。
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>楕円球さん
久々のコメント、ありがとうございます。
列車でのブレンナー峠越えは本当にいいですよね。時間はかかりますが、かつて青函連絡船で北海道に入った人の気分と少し似ているのではないでしょうか(私は乗ったことありませんが)。
>電車の車輪のひと転がりごとに、「イタリア」が接近してくる実感
この表現、なんだかわかる気がします。
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>lignpontoさん
>食べ物もおいしそうだし、女性も綺麗だし。
そうですね、両方とも当たっています(笑)。
言葉については、エスペラントができる人がどれだけいるかはわかりませんが、あとは身振り手振りで何とかなると思いますよ。イタリア人も若い人は結構英語をしゃべってくれます。ただ、挨拶や数の数え方ぐらいはイタリア語を学んでおくと断然便利です。