生粋のベルリーナーたち


昨日、私の知り合いで生粋のベルリーナー、メヒティルト.Tさんに3度目のインタビューを取らせてもらった(この方についてはこちらこちらをご覧ください)。とにかく話が面白くて、私はどんどんのめりこみつつある。好奇心が旺盛で行動力もあるメヒティルトさんが体験してきたことは、20世紀のベルリンの(のみならず世界の)政治史、文化史そのものだ。前回よく理解できなかった東西の検問所の話とか、壁崩壊の前日に東ベルリンにいたことなどを詳しく聞こうとすると、さらに面白い話が出てくる。また、60年代のバイロイト音楽祭の話になると、今度は貴重な写真をたくさん見せてくれた。
メヒティルトさんのアパートの隣には、これまた生粋のベルリーナーであるウルリヒさん(1939年生まれ)が住んでいて、昨日メヒティルトさんと会う前に私はこの方と少しおしゃべりしていた。メヒティルトさんと対照的で面白いなと思ったのが、壁があった時代の、2人の東との関わり方の違いだ。例えば、メヒティルトさんは向こう側に住む知人に会いに行ったり、オペラを観に行ったりと、比較的頻繁に東ベルリンに足を運んでいる。だが、ウルリヒさんはそのようなことは一切しなかったという。それは「同じ自分の街なのに、なぜ入場料を払って入らなくてはならないのか」という思いがあったからだ。だが、そんなウルリヒさんも、壁の崩壊を知った夜は一目散に壁を越えて東側を覘きに行ったという。一方のメヒティルトさんは、一体何が起こったのか状況がよくわからなくて、その夜はそのまま寝てしまったそうだ。
今回つくづく思ったのは、自分より長く生きてきた人にはやはり相応の敬意を払わなくてはなあということだった。メヒティルトさんは私の母親と同い年だが、自分の親にここまでつっ込んで昔の話を聞いたことがあるかというと、残念ながら、ない。皆さんの周りにも、今のうちに話を聞いておかないと後になって後悔するかもしれない人、というのはいるのではないでしょうか。意外と身近なところに。このインタビューの内容は、近いうちに何とかまとめたいと思っています。
写真は往年の指揮者、オットー・クレンペラー(1885-1973)。1967年に、メヒティルトさんがバイロイト祝祭劇場の前で撮ったものを又撮りさせてもらった。クレンペラーもまた、ベルリンと少なからず縁がある音楽家だ。

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5 Responses

  1. gramophon
    gramophon at · Reply

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    ドイツの他の町の人も同じだと思うのですが、郷土愛があって、そこに生まれたことを皆さん誇り思ってますね。私が働いていた店の事務員がBerlinerで、「妻はPreussen出身だけど、俺はBerlinerだ」といつも自慢してました。

    懐かしさにつられて、思い出話ばかりで恐縮ですが、その人はお客さんが残した肉をいつも犬にやってました。家族以外には凄く吠える番犬でしたが、不思議と日本人が遊びに行っても吠えなかったのです。きっと、醤油の匂いを嗅ぎ分けていたのでしょう。

  2. Yozakura
    Yozakura at · Reply

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    Masato様:クレンペラーの写真、拝見。
     40年前のもので、しかも「叉撮り」だそうですが、雰囲気はしっかりと把握されており、臨場感あり。貴重な画像の上梓、有難う御座います。
     その70歳前後の人々への取材活動、とても愉しそうですね。お時間ありましたら、彼等の陳述録を纏めて掲示して下さると、面白く読めるような気がします。勝手ながら、期待しております。

     過去の冷戦時代の出来事にしても、活字の記事や論文を読み、写真や映像による報道に接して、「少しは分かったようなつもり」でいたとしても、そうして、実際に現場で生活していた体験者の談話を聴くと、「取材者が当然視し、特に注意してもいなかった種々の前提が、実は別のものであったとか、欠落していた」と判明する事が、あるやも知れません。
     取材する過程での愉しみの一つは、ひょっとしますと、そうした経緯にて判明する「取材者側の思い込みや、事前の既成概念」ではないかとも推測しております。意外性と遭遇する取材時の楽しみ、こちらにもお裾分けして下さればれ幸いです。お元気で。

  3. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >gramophonさん
    >「妻はPreussen出身だけど、俺はBerlinerだ」
    若い人はまた少し別かもしれませんが、年配のベルリーナーでこういう方は少なくないと思います。そして南(特にバイエルン)へのむき出しの対抗意識!半分は冗談なんでしょうけど、話を聞いているとつい笑ってしまいます。

    日本人には吠えない犬、本当に醤油の匂いがわかったんでしょうか。こちらの犬は基本的には静かな犬が多いですよね。

  4. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >Yozakuraさん
    お久しぶりです。コメントありがとうございました。
    新しいデジカメのお陰で、この距離でクレンペラーの写真を又撮りしてもかなりクリアに撮れるようになりました。実はクレンペラーの他にもそうそうたる面々の写真を撮らせてもらったので、そのうちにアップします。

    >そうした経緯にて判明する「取材者側の思い込みや、
    >事前の既成概念」
    本当におっしゃる通りだと思います。
    冷戦時代の西ベルリンというと、「壁に囲まれた陸の孤島ゆえ、閉塞感に満ちた暗い時代」と何となく理解してしまいがちですが、実際に彼らの話を聞いてみるとそうでもないんです。むしろそんな時代をしたたかに生きてきた彼らの強さみたいなものを、随所に感じることができました。このインタビューは追々まとめるつもりですので、期待してお待ちください。

  5. gramophon
    gramophon at · Reply

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    犬でも学校へ入れて教育するんでしたね。ただ、知り合いのドイツ人が訪ねても吠える犬でしたから、たぶん、わかってたんだと思いたいです。

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