昨日の決勝戦、FanmeileのPVで観ようとまずは足を運んでみたのですが、ブランデンブルク門、中央駅前などいずれの入り口もすでに封鎖されていました(試合までまだ2時間近くあるというのに!後から知ったところによると、6月17日通りのPVには何と60万もの人が集まったそう)。
Fanmeileはきっぱり諦めて、第2候補に考えていた東駅近くのラディアルシステムに行ってみました。先日ご紹介したコンサートの折、ここでもPVがあると聞いていたからです。
ここに来て正解でした。ラディアルシステムのDeckeと呼ばれる半野外のスペースは、シュプレー川からの風が吹いてきて気持ちよく、過激なファンがいないので、試合そのものも楽しめそうな雰囲気。何よりメシがうまかった。左のクスクスを中心とした盛り合わせは4ユーロと割安。フランス風のグリル(右)も楽しめて、Becksを飲みながらいい気分でフィナーレのときを迎えました。
試合を支配したのはスペイン。それはしょうがないにしても、この日のドイツには、ポルトガル戦で見せたダイナミックな攻めが影を潜め、彼らが大舞台でこそ発揮してきた精神的な強さも感じられません。バラックを始め、どの選手もどことなく疲れているように見えました。
印象的なプレーを1つ挙げるなら、58分頃、ドイツがサイドから崩して、最後バラックがシュートしたシーン。それまで比較的おとなしく観ていた周囲の人たちが、あのプレーを機に息を吹き返したように熱くなりました。しかし、それも10分ぐらいだったか。以降ドイツがフィニッシュまで持ち込むシーンはほぼ皆無で、諦めムードが漂う中試合終了。まあ、スペインの優勝は、こちらのメディアが「勝利に値する」という意味でよく使う、”hochverdient”そのものだったと思います。
決勝戦にしては、やや盛り上がりに欠けたような気がするけれど、それでもユーロ2008は私の中では文句なしに5つ星の大会だ。正直、2006年のワールドカップ以降、サッカーをほとんど観なくなってから、自分が再びサッカーに熱狂できるとはあまり思っていなかった。今回は日本が出ているわけでもないのに、ヨーロッパ在住の1人として自分も参加したなあという感が強く残る。それは何より、サッカーそのものが面白かったからだ。凡戦が極めて少なく、サッカーの醍醐味を体感させてくれる痛快な試合が多かった。中でも、(「予選リーグのヨーロッパチャンピョン」で終わってしまったが)オランダ、ロシア、そして何と言ってもトルコが魅せた。クロアチア戦での同点ゴールとか、いまでも忘れられない数々のシーンが頭に過ぎる。「クロイツベルクの夏のメルヘン」、かな。
現在の欧州では国境という概念がどんどん薄れ、人の行き来もこれほど盛んになっているのに、サッカーのユーロでは国という古典的な単位で動く。これほど国旗を目にする日々も他になかった。だが、街中でドイツの三色旗をいくら見かけても、恐いと感じる気持ちは私の中にもうほとんどない。周りを見渡しても、「ドイツ」だから、「トルコ」だからというので盛り上がるのではなく、サッカーやボールの動きそのものを楽しんでいる人がほとんどだったと思う。その証拠にと言うべきか、ドイツ対トルコ戦の試合後、街に険悪なムードが流れる気配は皆無だった。自分が所属するものに対する愛着を持ちつつも、相手に対するリスペクトを忘れない。それは、悪質なファウルなどが前大会に比べて少なかった、試合内容にも現れていたのではないだろうか。政治的に何かとゴタゴタ続きのアジアでも、こういう大会を迎えられる日が来て欲しいと願う(その意味で北京五輪には注目しているのだが・・・)。
サッカーのユーロはひとまず終わりだけど、政治共同体としてのユーロの実験はこれからも続く。次回のユーロ2012は、舞台を大幅に東に移してポーランドとウクライナの共催。これも実験のようなものかもしれない。
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サッカーはド素人なのですが、今回、準決勝にトルコとロシアが残ったという点に、ここ数年の新興国の勢いのようなもの、あるいは現在の欧州の状況を重ねて見てしましました。
次大会の開催国が、かつての東側諸国とソ連邦の一員というのも、
新しい時代の象徴的な面なのかもしれませんね。
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>hiro_hrkzさん
おっしゃる通り、トルコとロシアという、ヨーロッパの最奥にある国が今回躍進したのは興味深い事実だと思います。ウクライナのキエフには行ったことがありますが、次回大会の開幕戦か決勝戦があそこで行われるというのは、なかなかすごいことです。スタジアムはこれから作るのだそうですよ。