ベルリン・ドイツオペラの《利口な女狐の物語》

Bernd Uhlig (c) 2002
最近観た中では、クリスマスの《くるみ割り人形》や大晦日のベルリン・ドイツ響とイタリアのサーカス団によるジルベスターコンサートも大変楽しめるものだったのですが、ここで書くにはやや賞味期限切れの感があるので、今年最初に観たオペラの話でも。ベルリン・ドイツオペラの《利口な女狐の物語》です。
ヤナーチェク作曲のこの愛すべき作品については、先月ネットで観られるパリ・オペラ座の上演でご紹介しましたが、あの後日本在住の何人かの方から「どうしてもネットにアクセスできない」とのメールをいただきました。どうやら日本からのアクセスが何らかの事情(もしくは意図)によりブロックされていた模様。詳しい背景はわかりませんけど、大変残念に思いました。
劇場の入り口の中に入ると、にぎやかな子供たちの群れが目に飛び込んできます。どうやら学校の授業の一環で引率の先生と聴きに来ていた模様。確かに教育用のオペラとしては、動物の着ぐるみがたくさん出てくるなど親しみやすい面はありますが、このオペラの思想はなかなか深いものがあるし、劇中の3人の中年男に見られる人生の悲哀なんて子供にはわからないだろうなあという思いも。途中で飽きて騒ぎ出すんじゃないかと正直ちょっと心配でした。
演出はカタリーナ・タールバッハ(Katharina Thalbach)。もともとは東ベルリンの出身の女優なんですが、1976年のヴォルフ・ビアマンの市民権剥奪事件に反抗して西側に移住したという、なかなか興味深い経歴を持つ人物です。昨年Bar jeder Vernunftというカバレット劇場の”Zwei auf einer Bank”という音楽劇でこの人のことを知り、そういえばその前の年に観た、映画「Du bist nicht allein」(旧東ベルリンの高層アパートの日常を好タッチで描いた佳作)で中年夫婦を演じていたことも思い出しました。 まさかヤナーチェクのオペラまで演出する人だとは。
この日はまずローター・ツァグロゼク指揮のオケがよかったです。透明感のあるアンサンブルが保たれつつも、2幕以降は時おり匂い立つような官能的な響きも聞こえてきて、ヤナーチェクが紛れもなく20世紀の作曲家なのだということを改めて思いました。タールバッハの演出は、先日のパリのに比べるとやや説明調で子供受けを狙ったところも感じなくもなかったですが、作品のよさを素直に味あわせてくれたし(ラストシーンではやはり泣いてしまう)、びっくりしたのは子供たちが最後まで静かに聴いていたこと(途中で休憩を挟まないのもよかったかも)。カーテンコール中は大歓声で、客入りはあまりよくなかったけれど、大変後味のいい舞台でした。
YouTubeに《利口な女狐の物語》のアニメ版を発見(BBC製作。演奏はケント・ナガノ指揮ベルリン・ドイツ響)。これ、前から一度観てみたかったんです。

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8 Responses

  1. Puku
    Puku at · Reply

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    面白そう!
    この、でっかい張りぼてのおっちゃん、くるみ割りの時に知人が息子に舞台裏を見せてくれた時に見ました。なんじゃこりゃーー!とびっくりしましたが、このオペラの大道具だったのですね。楽しそう~!

    DVD,持ってます。お貸ししますよ~!

  2. Puku
    Puku at · Reply

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    面白そう!
    この、でっかい張りぼてのおっちゃん、くるみ割りの時に知人が息子に舞台裏を見せてくれた時に見ました。なんじゃこりゃーー!とびっくりしましたが、このオペラの大道具だったのですね。楽しそう~!

    DVD,持ってます。お貸ししますよ~!

  3. 焼きそうせいじ
    焼きそうせいじ at · Reply

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    このベルリン・ドイツ・オペラの演出は、9年前から繰り返し上演されているロングランですね。視覚的に楽しい舞台ですけれど、音楽を殺してしまっているところがあって、私はどうしても違和感を感じます。なお、目下映像を作成中とのことで、間もなくテレビ放送やDVDで登場すると思われます。

    アニメ版はそうした違和感がないのは良いし、美しい映像なのですが、英語・短縮版というのが残念。カットされたのは大半が「大人向け」の部分ですし。

  4. 焼きそうせいじ
    焼きそうせいじ at · Reply

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    このベルリン・ドイツ・オペラの演出は、9年前から繰り返し上演されているロングランですね。視覚的に楽しい舞台ですけれど、音楽を殺してしまっているところがあって、私はどうしても違和感を感じます。なお、目下映像を作成中とのことで、間もなくテレビ放送やDVDで登場すると思われます。

    アニメ版はそうした違和感がないのは良いし、美しい映像なのですが、英語・短縮版というのが残念。カットされたのは大半が「大人向け」の部分ですし。

  5. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    Pukuさん
    >DVD,持ってます。お貸ししますよ~!
    ひょっとして録音に参加されたのですか?YouTubeでも一応観られるのですが、画面の質を考えるとぜひお借りしたいです。またご連絡しますね!

  6. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    Pukuさん
    >DVD,持ってます。お貸ししますよ~!
    ひょっとして録音に参加されたのですか?YouTubeでも一応観られるのですが、画面の質を考えるとぜひお借りしたいです。またご連絡しますね!

  7. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    焼きそうせいじさん
    >音楽を殺してしまっているところがあって、私はどうしても違和感を
    >感じます。
    私も何箇所かで感じました。突然裸の美女が出てきたり、一番最後で森番の巨大な足が出てきてキノコを踏んづけたりというあたりは、正直なくてもいいのにと思いました。しかし、8年も続いているというのはすごいですね。ドイツ・オペラのあのすばらしい「イエヌーファ」「マクロプロス」でさえ確か2シーズンぐらいで終わりでしたし、「死者の家から」もすぐ消えてしまったように思いますから。今度はコーミッシェあたりに新作を期待しています!

  8. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    焼きそうせいじさん
    >音楽を殺してしまっているところがあって、私はどうしても違和感を
    >感じます。
    私も何箇所かで感じました。突然裸の美女が出てきたり、一番最後で森番の巨大な足が出てきてキノコを踏んづけたりというあたりは、正直なくてもいいのにと思いました。しかし、8年も続いているというのはすごいですね。ドイツ・オペラのあのすばらしい「イエヌーファ」「マクロプロス」でさえ確か2シーズンぐらいで終わりでしたし、「死者の家から」もすぐ消えてしまったように思いますから。今度はコーミッシェあたりに新作を期待しています!

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