追悼クルト・ザンデルリンク

大指揮者のクルト・ザンデルリンクが亡くなったそうですね。享年98歳。あとわずか1日で99歳の誕生日だったといいます。2007年に彼の95歳のバースデーコンサートを聴く機会があり、この時どなたかが「次はマエストロの100歳の誕生日をここでお祝いできることを!」と挨拶され、何となく現実になりそうな気がしていたのですが、願いは叶いませんでした。もう十分長生きされたとはいえ、ついにこの日が来たかという思いです。
私がベルリンに来てまだ間もない頃、幸運にもザンデルリンクさんの実演に2回ほど接することができました。最初は2001年2月、シュターツカペレ・ベルリンのオーケストラ公演で、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番とブラームスの交響曲第2番でした。ブラームスが驚異的な名演で、冬の寒い夜でしたが、「ああ、本物のブラームスを聴いた!」とじんとくる感動が腹の底まで残りました。そして、2回目は2002年5月の引退コンサート。これはCDにもなっていますが、あんなにうねり昂るシューマンの4番のシンフォニーは聴いたことがありません。この時89歳とは思えないほど、指揮ぶりもエネルギッシュでした。コンツェルトハウスのバルコニー席から、全身の血が沸騰するような思いで聴いたのをまだ生々しく記憶しています。
残念だったのは、確か2000年秋に予定されていたベルリン・ドイツ響とのシューベルトの「グレイト」、2002年1月シュターツカペレとのショスタコーヴィチの交響曲第8番、同年6月のベルリン・フィルとのショスタコーヴィチの交響曲第6番のコンサート、そのいずれもがキャンセルになってしまったこと。もしどれか1つでも実現していたらきっとすごい体験になっただろうに、と今でも思います。あと、私がベルリンに来る直前、ベルリン・フィルと共演したシベリウスの交響曲第2番や、私がちょうど一時帰国中で聴けなかった2001年9月のベルリン放送響とのブルックナー交響曲第3番の録音など、将来的に日の目を見ることがあればと願っています。
冒頭の写真は、確か2003年か04年、フリードリヒ通りのDussmannでザンデルリンク自伝出版の記念イベントが行われた際、ご本人よりいただいた直筆のサイン。私は普段楽屋に出向いて音楽家のサインをもらうことはめったにしないのですが、この時は特別でした。引退コンサートのCDのブックレットに書いていただいたサイン、私の宝物の1つになっています。
マエストロ・ザンデルリンクのご冥福を心よりお祈りします。
9月25日のモルゲンポスト紙の訃報欄より



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2 Responses

  1. HIDAMARI
    HIDAMARI at · Reply

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    2001年6月のベルリンフィル定期のチケットを取ったのですが直前にキャンセルで、とうとう一度もザンデルリンクの実演は叶いませんでした。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    HIDAMARIさん
    あの時ベルリンにいらしていたのですね。あの公演の代役は確かハイティンクで、ブラームスの2番に曲目も変更になったと記憶しています。残念でしたが、それでも2回とはいえ、巨匠の実演に接することができたのは貴重でした。

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