1年半ぐらい前から、再びアマチュアのオーケストラでフルートを吹いています。ベルリン自由大学より援助を受けているJunges Orchester der FUというオーケストラ。学生オケの部類に入るのかもしれませんが、年齢制限のようなものはないので、私を含めて「元学生」の人もかなり混じっています(笑)。
リハーサルは、学期期間中の毎週日曜日の夜に3時間。本番のコンサートは、基本的に2月と7月の年2回です。去年2月の本番では、チャイコフスキーの交響曲第5番、メンデルスゾーンの《フィンガルの洞窟》とヴァイオリン協奏曲を演奏しました(これがそのときの様子。フィルハーモニーの室内楽ホールが会場)。個人的には、大好きなメンデルスゾーンの2作品を演奏できたことが何よりうれしかったです。
去年7月のコンサートは、リムスキー=コルサコフの《シェラザード》がメインの演目でした。このときはピッコロを吹いたのですが、いくつかの難所も含めて、大変やり甲斐のある作品でした。これはクロイツベルクのエマウス教会での本番の様子。
練習は週1回とはいえ、仕事をしながら毎週参加するのは、ときに負担に感じることもあります。それでもなかなかやめられないのは、やはり楽しいからなのでしょう。1つの作品に、半年近く浸れるのはアマチュアの1つの特権(?)というべきか、それが名作の場合、喜びはさらに高まります(プロの場合は、大抵数回のリハでもう本番ですからね)。今回のメインの曲は、ショスタコーヴィチの交響曲第12番というかなり珍しい曲。一般的にショスタコの中ではあまり世評の高い作品ではないのですが、やはり何ヶ月も付き合うと、自然と愛着が沸いてきます。CDを通して聴いただけではわからないであろう、リズムの面白さや細部への発見があったり、全曲を通して吹いたときのエネルギーの放出感を体で感じたりなど。
あともう一つ、アマチュアオケの中で演奏してみると、それを通してその国の社会が見えてきます。と言うとちょっと大げさですが、少なくとも人と人との関係性が見えてくるというのはありますね。例えば、リハーサルの様子を見ていると、彼らがどういう学校教育を受けてきたか、授業がどんな雰囲気で行われているのか、ということが何となく伝わってくる。とにかく、日本の学生オケとは全然違います。日本だと、指揮者やトレーナーの方が立場が上で、静かに、ありがたくお話を拝聴するというムードがありますが、こちらでは指揮者(それがベテランだろうが、学生指揮者だろうが)とオーケストラは基本的に対等の関係で向かい合っているように思います。だから、指揮者が指示を出しても、そこで自然とやり取りが生まれるし、「どうして?」と理由を問うときもある。それはもちろん、彼らが学校や家庭でそういう教育を受けてきたからでしょう。
まあその一方で、日本の「真面目な」世界からやって来た者としては、「忍耐力がないなあ」と感じることもしばしば。プローベ中なのに、休みの小節が長いと本やレポートを読み出したり、時には後ろからハリボのグミが回ってきたり(笑)。これが日本だったら、血相を変えて怒ったり、注意したりする先輩がいるでしょうが、そういう人もいないので、私もまあそういうものかと思うようにしています(笑)。こういう環境で、授業をする学校の先生は大変だろうなと想像したり・・・。
でも、音楽の楽しみ方が自然でいいなあと感じることも多いです。例えば、ベルリン・フィルのライブを観ていると、エマニュエル・パユとアルブレヒト・マイヤーが演奏中なのに向かい合って、冗談めかした仕草をするときがありますが、アマチュアでもそういう「遊び」が自然と起こる(日本だったら、こういうところでも血相を変えて怒る先輩がきっといますが)。あと、日本が初めて出場した1998年のワールドカップフランス大会で、日本代表が本選の直前にフランスのアマチュアチームと練習試合をした際、「フランス代表より全然下手なのに、パスの回し方は(フランス代表と)同じだった」というようなことを日本の選手が言ったそうですが、それと同じようなことは音楽にも当てはまるように感じます。
私にとっては、音楽を通して得られる、とても面白い異文化理解の場といえるかもしれません。
今回私にとってちょっと特別なのが、1回のコンサートで3種類のフルートを吹くこと。リストでは並笛を、新作ではアルトフルートを、ショスタコーヴィチではピッコロを吹きます。こんなことは初めてなので、ちょっとドキドキしています。
アマチュアの演奏ですので、積極的にお誘いすることもできないのですが^^;)、もしご興味がありましたら、足をお運びいただけると幸いです。10日(日)がクロイツベルクのエマウス教会、15日(金)がフィルハーモニーの室内楽ホールで行われます。
Konzerte im Wintersemester 2012-13
Sonntag 10.02.2013 16:00
Emmauskirche, Lausitzer Platz (U Görlitzer Bhf)
Freitag 15.02.2013 20:00
Kammermusiksaal der Philharmonie
Programm:
Franz Liszt
Totentanz für Klavier und Orchester
Hector Marroquin
El Enemigo für Sopran und Orchester (Uraufführung)
Dmitri Schostakowitsch
12. Symphonie “Das Jahr 1917”
Junges Orchester der FU – Berlin
Künstl. Leitung – Antoine Rebstein
Klavier – Beatrice Berrut
Sopran – Julia Baumeister
Eintritt:
Kammermusiksaal: 15 / 12 / 8 €
Emmauskirche: 10 €
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ご無沙汰しております。昨年は転勤やら何やらで落ち着かない日々でしたが。今月ベルリンへ行くので最近また読まさせていただいておりました。演奏会!と思いましたが日程が合いませんでした、残念。しがない元フルート吹きとして、中村さんの演奏する姿を拝見したかったです。アルトフルート、私は未体験です。オケの雰囲気が面白いですねーハリボ食べながらってウケます。これからも楽しんでくださいね!
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同じ経験はないけれど、頷けることが多い記事です。中村さんの姿勢がとても良く現れているような気もしました。偉そうな言い方で申し訳ないですが…。
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一つのコンサートでアルトフルート、並笛、ピッコロを持ち替える?なんてすごいですね。
演奏会が成功に終わりますように。
ハリポのグミが回ってくる話、思わず笑ってしまいました。土地柄ですかね。
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外国で暮らすってこういうことなんだろうなあ、と思いながら楽しく読みました。異文化を受け入れて観察している真人さん、さすがです。
コンサートの成功を祈っています。
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フルート吹かれるんですね!私もず〜と吹奏楽部でした。ピッコロとフルートと2本持ち替えでした。
勝手に親近感が湧きます!最近は全然触っていませんが・・・(泣)
アルトフルートは未経験ですが、日本フルートソサエティーのコンサートの為の練習中に、ちょこっと触らせてもらった事があります。実際に触ると、見ている分より太く長く感じた事を覚えています。
ベルリンで、私もご一緒したいです。ハリボー食べながら(笑)
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皆さま、うれしいメッセージをたくさんいただき、ありがとうございました。明日がいよいよフィルハーモニー室内楽ホールでの本番。ここで演奏できるのは年に1回なので、思いっきり楽しんできたいと思います。