NHK「テレビでドイツ語」のテキストに昨年4月から連載させていただいた「ハンザ都市を巡る」の連載が、一応の最終回を迎えました。今回訪れたのは、エストニアのタリン。振り返ってみると、当初の想像以上に地理的に大きな広がりを持った旅となりました。ハンブルク、リューベック、ブレーメン、ロストック、リューネブルク、ヴィスマール、ブルージュ(ベルギー)、ゴスラー、グダニスク(ポーランド)、そしてハンザ都市の最北端に位置するタリン。
こうして都市名を並べてみるだけでも、いろいろな記憶が蘇ってきます。新旧の港の風景が印象深いハンブルク。華やかさと哀愁が同居したリューベックの破風屋根。ロストックの船乗りの酒場で出会った3人組にビールをご馳走になったこと。リューネブルクの「新ハンザ同盟」の祭りの賑わい。ブルージュの旧市街で何度も聴いたカリヨンの調べ。山間の町ゴスラーの清涼な空気。夜の10時半に駅に着いたものの、ホテルの場所を勘違いし、路頭に迷ったグダニスク。その美しさに改めて感動し、旧市街の路地を夢中で歩き続けたタリン・・・
海外取材まで実現できたのは、ハンザ都市の歴史的意義を理解してくださったNHK出版のスタッフの方々あってのことで、細かなサポートと共に、心よりお礼を申し上げます。原稿料をいただいて旅行記を書くのは、小学生のときに宮脇俊三さんの旅行記に出会って以来、漠然と抱いていた夢でもあったので、毎回楽しく貴重な経験をさせていただきました。限られた紙面ゆえ、原稿をいかに削るか毎回格闘していましたが、それもまたいい勉強でした。
「一応の最終回」と書いたのは、訪れてみたいハンザ都市がまだいくつもあるからです。例えば、北ドイツのシュトラールズント、ハンザ同盟の在外商館があったベルゲン(ノルウェー)、ノヴゴロド(ロシア)、ゴトランド島のヴィスビー(スウェーデン)などなど。今後も旅と調査を続けて、いつか1冊の形にまとめられたらと願っています。
1年間お付き合いいただき、どうもありがとうございました。