ベルリンにある最古のオペラハウス、ベルリン州立歌劇場の今シーズン最初のプレミエはいきなり現代作品。それもかなり実験的な試みだ。
タイトルは”seven attempted escapes from silence“。Jonathan Safran Foer という弱冠27歳のユダヤ系アメリカ人作家の書いたこの台本は、「トンネル」「壁」「ロープ」「ドア」「窓と鏡」「詐欺師」「静寂への逃亡」という7つの部分から構成される。それに7人の若手作曲家がそれぞれ音楽を付け、演出もそれぞれ別の人が担当するという異色の試み。演出は振り付け、造形美術、パフォーマンスなど、様々なジャンルの人から成り、その中にはこの劇場のシェフであるペーター・ムスバッハの名前もある。製作開始から公演までの1年という準備期間は、比較的短い方に入るだろう(その製作過程でのメールのやり取りは、プログラムの後半に掲載されている)。
現代音楽に対して嫌悪感を抱いている人は少なくない。その現代音楽をわかりやすく伝えるためにふさわしい音楽劇の形式とはどういうものなのかを探る試みだったようだ。会場は普段のオペラハウスではなく、その隣の普段練習に使われていると思われる、やたらと天井の高いがらんとしたホール。硬いベンチの上に、座布団のようなものを敷いて聴く。オーケストラのメンバーは15人。7つの部分はそれぞれ10-15分ほどで、内容はカフカ的な不条理を描いた作品ゆえに多くを語ることはできないが、なかなか刺激的な2時間10分だった(休憩はなし)。こういう試みを、ベルリン州立歌劇場のような伝統的なオペラハウスが行っているのは興味深い。客の入りもよかった。