このブログで何度かご紹介している、東ドイツ時代最大の遺物と言っていい共和国宮殿(Palast der Republik)の取り壊し作業が、1月30日ついに始まったらしい。混乱を避けるためだろうか、作業開始の日程は公にはされておらず、私も先ほどニュースで知ったばかりだ。
先週金曜日の27日、たまたま近くを通ったので、私は共和国宮殿の正面を何枚かカメラに収めた。取り壊しの開始は2月半ばとも下旬とも伝えられていたので、この時が最後になるとはまだ思っていなかった。周りには私と同様、カメラやビデオでこの建物の最後の姿を収めている人たちをちらほら見かけた。
共和国宮殿とその前の空き地となっている場所には、前回絵葉書でご紹介した豪奢な王宮が1950年まで構えていた。再統一後の2003年に、ドイツ連邦議会はその王宮の再建を決定した。
しかし、連邦建設大臣のヴォルフガング・ティーフェンゼーが先日発表したところによると、王宮の再建工事が始められるのは、「早くて2012年」とのことだ。当初の予定よりも大幅に遅れることになる。王宮の建設に多かれ少なかれ携わっている人たちの多くは、「あまりに慎重すぎる」、「2009年、いや2008年から工事はスタートできるはずだ」と、建設大臣の見方に対して反発した。町の新しいシンボルとなる王宮の建設をできるだけ早くを始めたいベルリン側と、工事には膨大な費用がかかるゆえ、お金が用意できてから工事をスタートさせたい連邦政府側との意見の違いが明らかになったわけだ。工事が始まるまで、この広大な敷地はとりあえず緑地として使われるらしい。
いずれにしろ、プロイセン時代の王宮の再建という、まさに気が遠くなるような事業が、ここベルリンでゆっくり始まろうとしている。完成はいつのことになるのだろうか。
通りを隔てて立ち並ぶのが、「旧博物館(Altes Museum)」。建築家カール・フリードリヒ・シンケル(1781-1841)の代表作のひとつ。
この姿に特別の感慨を抱く人は、ベルリンでは少なくないようだ。ひょっとしたらこのブログの読者の方の中にもいらっしゃるかもしれない。いろいろな人の思いを乗せながら、共和国宮殿はいま最期の時を迎えようとしている。
(当ブログが開設してから今日でちょうど半年が経ちました。ここまでマメに更新してこれたのも読んでくださる方があってのことです。これからもどうぞよろしくお願い致します。よかったらワンクリックいただけるとうれしいです)
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そうですか、共和国宮殿もなくなりますか。
98年の初めてベルリンを訪問した際に、あまりの「共産主義建築」に笑ってしまった記憶があります。ドレスデンにも似た建物、ありますね。Alte Marktだったか?確か共和国スポーツ会館だかやはり宮殿だったか。個人的にはこういうセンスの無い(某国の建築のような)ハコは無くして貰いたいですが・・・。
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ついに始まってしましましたか・・。なかなか始まらないので延期になったのかなと思ってましたが。昨年の夏にじっくり見ておけたのが幸いです。王宮を撤去居したのは愚かだったかもしれないし、たしかに周りの建物には調和しないかもしれませんが、自分はそれもまたテレビ塔などとともにベルリンの歴史の生き証人だと思っていたので残念です。ブラウンのミラーガラスに映える夕日はとても綺麗で、東ドイツ国歌のメロディーを口ずさみながら見てると、なんか胸にジンときたんですけどねえ。皇帝の住んだことのない王宮を再建するより、良くも悪くも東ドイツを体現した共和国宮殿を保存してほしかったです。このままだと自分の宿泊したホテル・ウンターデン・リンデンなんかも取り壊しの対象になるかもしれませんね。でもまあこのブログのおかげでこのニュースを知ることができたので感謝してます!
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はじめまして。東京のアマチュア・ヴァイオリン弾きです。ドイツ近代史が専門です。偶然見つけて、突然ですみませんが、トラックバックさせて頂きました。
汚れ放題、落書き放題の共和国宮殿はすでに見るに堪えず、旧体制を哂う「さらしもの」にしか見えなかったので、正直、取り壊しにホッとしています。
興味深いブログですね。今後も見させて頂きます。
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みなさん、ご感想どうもありがとうございます。
この前テレビのニュースで宮殿前での街頭インタビューが流れていましたが、意見はさまざまでした。確かにご覧のような建物ですが、いまだに取り壊しに反対する人が根強い現状を見るにつけ、この建物とあの時代への興味が増してきました。ついに、という感じですね。
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中央駅さん、いよいよあそこの解体が始まりましたか。 まあこれも時間の問題だったのでしょうね。この宮殿での私のつまらない思い出については、以前ここに書き込みをさせてもらいましたし、Mitteleuropaの掲示板に「2つのPalast」として投稿したこともあります。
http://8821.teacup.com/via_regia/bbs?OF=80&BD=8&CH=5
30年前、完成間近だったころからあの建物を見続け、そしてたった一つの思い出ですら貴重に感じていた私ですから、ましてや旧東ベルリンでこの場所にいくつもの思い出をもっている人にとっては、まことにつらい気持ちもあるでしょうね。そういう人々の気持ちにも共感できるものがあります。そのあたりの感情の「ひだ」も取り込まれている中央駅さんのレポートには感心しています。
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常に新しい姿を求めて前に進むというのが、フィルハーモニーだけではなくベルリンの他の場所の都市計画にも共通したものですね。こういう都市の姿に、私は「ベルリン」という街のエネルギーを感じます。新しい「中央駅」建設もこういう線をいっています。そういうものと異なるものが「王宮再建」ということです。「王宮再建」を言うならば私だったら、ついでにアレックスのテレビ塔の同時解体も主張してほしいところです。そこまで言わなければ、一貫した都市計画ヴィジョン、一貫した美観尊重とはならないでしょう。
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今月後半より出張で渡欧する予定です。なんと「出張としてはほとんど初めて」のドイツです(笑)。ベルリンにも行くはめになってしまいました。貴地には音楽なしのたった2日だけですが(笑)。それからどういうわけか、ザクセンの某都市も(苦笑)。あそこに急に用事ができるとは、本当に皮肉な話です(運命のいたずらか?)。ベルリンでは「共和国宮殿解体作業」、のぞいてこようかと思っています。ではまた!
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>la_vera_storiaさん
ご感想ありがとうございます。これだけの内容なのに、小さなコメント欄しかご用意できないのを申し訳なく思います。
王宮の再建については、何か違うのではないかという思いを抱き続けていたのですが、この文章を拝見して、そのもやもやした気持ちがようやく晴れた気がしています。
>常に新しい姿を求めて前に進むというのが、フィルハーモニーだけでは>なくベルリンの他の場所の都市計画にも共通したものですね。
まさにこれだと思います。他の欧州の大都市と比較しても、ベルリンはこういう精神が一際強いはずなのです。なのに、あの装飾でこてこての王宮を再建するのは、あまりに時代に逆行し過ぎている。それは、例えばドレスデンのフラウエン教会の再建とは、意味合いが全く違うと思います。
今のフィルハーモニーは当初、Bundesalleに建てるはずだったと読んだことがあります。それをあえて、当時の冷戦の最前線だったポツダム広場に建てたのですから、まさに大英断だったと思います。そしてその判断は間違っていませんでした。
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亀レスですが・・・
『王宮派』の方も、『宮殿派』の方も、
下記のサイトで共和国宮殿解体工事の様子をご覧になれます。
http://www.dhm.de/zcam/index.html
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ぷりんつ・あるぶれひとさん、情報ありがとうございます。
数日前の新聞の記事にありましたが、下記のサイトでも今月下旬から共和国宮殿の解体の様子をライブ(!)で見れるようです。
http://www.stadtentwicklung.berlin.de/
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読売新聞の20日夕刊に、この共和国宮殿の取り壊しについて大きく取り上げられているそうです。興味のある方はご覧ください。私も読みたいところですが、残念ながらネット上では公開されていないようです。
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日本のベルリン展で、この建物の外壁が展示されていました。
私が2004年春にラトルのコンサートをベルリンに聞きにいったときは、「ZWEIFEL」という文字がドーンとかかってました。アスベストがたくさん使われていて、健康によくないんですってね。。
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>papagenaさん
ベルリン-東京展で共和国宮殿の壁が展示されていましたか。そのうち、この建物の破片が「ベルリンの壁」のように露天で売られるようになってりして・・
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そうだ、新しいおみやげ品になりますね。。なんか金色でキッチュでテカテカ光っていました。。