サン・ピエトロの丘に向かう途中の小道で(8月9日)
(前回のつづき)
今回はヴェローナで私が一番好きな場所をご紹介してみたい。旧市街の外れにある、一番最初の回に出てきたピエトラ橋(Ponte Pietra)を渡って、正面に延びている細い道を上る。とても狭い道なのだが、何となく日本の城下町を思い起こさせるスケールで情緒がある。途中の民家の窓では、珍しくネコが寝ているのを発見。ドイツではネコは家の中で飼うものなので、外で見かけることはめったにない。イタリアでは少し違うのかもしれないが、それでもヴェローナの旧市街でも全く見なかった。ネコに近寄ると大抵は逃げられるのがオチだけど、コイツは撫でても目の前で写真を撮っても全く動じない。ネコ好きにはうれしいひと時だった^^)。
さて、坂を上り終えて振り返ると、アディジェ川に架かるピエトラ橋をこのように見下ろすことができる。
川の向こうに見える塔はサンタ・アナスターシア教会(Chiesa die Santa Anastasia)、その奥はランベルティの塔(Torre dei Lamberti)。この眺めを前にして、ヴェローナに来てよかったという思いが込み上げてきた。
こちらは川の東側。私の泊まった宿もこの近くにあった。
しばらくこの眺めに見とれていて、そろそろ下に降りようかなという時、下から音楽が聞こえてきた。曲名ははっきりしないが間違いなくアストロ・ピアソラの音楽だ。この丘のふもとに、丘の傾斜を利用して作られたローマ時代の野外劇場(Teatro Romano)があり、そこから聞こえてきたらしい。ちょっと気になって下に降りる際に劇場の前を通りかかったら、この夜アルゼンチンのJulio Boccaというバレエ団が公演を行うということがわかった。先ほど流れてきた音楽と「野外劇場」というのに惹かれて、私は観てみたくなった。
1時間後、再びやって来た劇場前は地元の人々でごったがえしていた。切符を買って中に入ると、ほぼ満員の盛況ぶりだ。同じヴェローナでもアレーナのスケールと聴衆の国際性には比べるべくもないが、逆にこのローマ劇場には地元の人たちの集いの場というようなアットホームな雰囲気がある。アジア人はどう見ても私一人しかいないようだったけれど、居心地は悪くなかった。この劇場、舞台は完全に現代化されているが、客席はローマ時代の劇場の面影を十分に残している。それゆえ座るのは堅い石の上となるが、レンタルで「座布団」を借りることもできる。
イタリアで劇場に行くのはほとんど初めてのことだった。地元のお客さんが「ブラーヴォ」と複数形の「ブラーヴィ」をちゃんと使い分けることにいちいち感心してしまったり、この人たちはローマ時代からこうやって劇場に足を運んで芝居やショーを観るのを楽しみにしてきたんだなあと思っては、いい気分になったりもした。
かなり現代的な振り付けのバレエだったが、視覚の美しさを重視したものだったので普通に楽しめことができた。中でも、やはり自国ものだからというのが多かれ少なかれあるのだろう、ピアソラの音楽を使ったプログラムが一番よかった。「ブエノスアイレスの春」や「秋」など、もうしばらく聴いていなかった音楽が、たまたま訪れたローマ劇場で斬新に再創造された形で出会うのは、大きな喜びだった。
公演の最中、音楽が途切れるとアディジェ川のざわざわしたせせらぎが聞こえてくる。川が運んでくる夏の夜風が心地よかった。
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とても素晴らしいショウみたいですね。
それにしても写真を見ると家が凄く密集しているんですね。
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野外劇場っていい雰囲気ですね。
そんな中でピアソラですかぁ、いいですね。
私もしばらく聴いていないです。
ブエノスアイレスの四季っていい曲ですよね。
大昔、クラシックギターでチャレンジしたこともありました。
あくまでもチャレンジですが (^^;
私はアディオス・ノニーノという曲が大好きです。
イタリアと関係のない書き込みになってしまいました (^^;
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>lignpontoさん
確かにすごく家が密集しているように見えますね。ドイツもイタリアも、アパートとアパートの間には隙間を作らないので余計そう見えるのでしょうね。日本とは建て方が違うのです。
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>nozomuzさん
>ブエノスアイレスの四季っていい曲ですよね。
私もこの曲は好きで、中でも秋と冬がいいですね。ライフログにありますが、ピアソラが70年にライブ録音した音源は最高です。アディオス・ノニーノもいい曲ですよね^^)