ノイケルンの黄金のカフェ

昨年の春、ノイケルンのある高校での荒廃ぶりが明るみになって以来、移民が多く住むこの地区はすっかりベルリンの「問題の地域」にされてしまった感がある。実際たまに事件は起こるし、多少ガラが悪いといえば確かにそうかもしれないが、何かと「危ない」というイメージが先行しがちなのは残念なことだと思う。まずは実際に歩いてみてはどうだろう。この地区の雰囲気に触れるには、U7のノイケルンの市庁舎駅で降りて、カール・マルクス通りに沿って歩いてみるのがいいかもしれない。まず外国人の率が非常に高い。道の両側にはケバブなどのインビス、日用品店、各種のディスカウントショップなどがひしめきあっていて、昼間はなかなか活気がある。一方で、ベルリンの他の地区ならどこにでもあるカフェが非常に少ないことにも気付くだろう。このノイケルンと、私がかつて住んだことのあるヴェディング(Wedding)は、カフェ不毛の地とさえいえるかもしれない。
3月のある日、「この近くに前から気になっているカフェがあるんだけど行ってみない?」という友達に連れられて、私たちはU7のノイケルン市庁舎駅に降り立ってみた。金曜日の夜だというのに、昼間と違って人通りが非常に少ない。「この界隈の人々は週末の夜をどこで過ごしているのだろう。それにこんなところにカフェなんてあったかなあ」と思いつつ歩いて行くうちに、カール・マルクス通りの駅からほど近いザールバウ・ノイケルンの中庭にCafé Rixはあった。
店に入った瞬間、黄金色に統一されたあまりにきらびやかな内装に私は圧倒された。高い天井に美しい装飾の数々。間違いなく築百年は経っていることを窺わせた。メニューにはこのカフェの歴史が詳しく紹介されている。それによると前回ご紹介した大ホールのザールバウができたのは、プロイセン帝国が成立して間もない1876年のこと。その後、少しずつ拡張されていき、現在Café Rixとなっているかつての小ホールは1880年ごろに建てられたそうだ。当時まだリクスドルフ(Rixdorf)と呼ばれたこの地域のサロンであり、ダンスホールとしても華やかな時を経験した。幸いにして戦災を免れ、1990年にはカフェとして再オープンした。
それにしても、通りからちょっと入ったところにこんな空間があったなんて、さまざまな時間の流れが同時に存在するベルリンならではだと思った。Café Rixは昼間からオープンしているが、この夢のような雰囲気に浸るにはやはり夜に来るべきだろう。ちなみに、飲み物等の値段も普通のレベルだと思う(むしろ安め)。
このカフェの写真を見ていて、私はふとウィーンのムジークフェラインザールの中に初めて入ったときの感動を思い出した。ベルリン・ノイケルンのカフェとウィーン・フィルの本拠地である通称「黄金のホール」。この比較は飛躍しすぎかもしれないが、両者に共通性はなくもないのだ。ムジークフェラインザールができたのは1869年。一方、ノイケルンのこのダンスホールは1876年。ほとんど同時期であるし、どちらも長方形の形をしている。ウィーンのホールは舞踏ホールとして使われることもある。
Café Rixはカフェのムジークフェラインザール?
それはともかく、あの時代の共通の何かが生み出した空間ということは言えそうだ。こういう雰囲気のカフェハウスはウィーンに行けば多くあるのかもしれないが、ベルリンでもその希望は十分に満たされる。
Café Rixは自分だけのとっておきの場所にしようかと思っていたんですが、週末にこの隣のザールバウで行われるオペラ「青ひげ公」の案内も兼ねて、ここでご紹介してみました。オペラを観た後に、このカフェで週末のひと時を過ごすのはいかがでしょう。よかったらぜひいらしてください。
Café Rix
im Saalbau Neukölln

Karl-Marx-Str. 141 (U7)
12043 Berlin
Tel: 030 686 90 20
tägl. 10 – 01 Uhr

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10 Responses

  1. Misa
    Misa at · Reply

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    こんなすごいカフェがノイケルンにあるんだね、知らなかったです。
    本当にコンサートホールみたいだね!

  2. kaorintan
    kaorintan at · Reply

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    まぁ! とても素敵なカフェですね。大人のカフェという感じがします。このような雰囲気の似合う女性になりたいものです。
    そういえば、そろそろサミットですね。ベルリンも厳戒態勢と聞きましたがいかがですか?

  3. akberlin
    akberlin at · Reply

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    ノイケルンというと確かに警官が校門に立つ中学(くらいに相当?)
    があったなぁ、という記憶、荒廃した地区というイメージですが
    ベルリンの底力というか、こういう古くて感じのいいところが隠れて
    いるんですよね・・・。

  4. MOTZ
    MOTZ at · Reply

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    素敵なカフェですね〜!ノイケルンというと怖い話しか聞かないのですが、変に怖がりすぎてパスしてるともったいないかも。
    3枚目の写真を見て感じたことですが、天井が高いこんな雰囲気のカフェのウエイトレスさん、ちょっと憧れます。
    Fischsuppeの味も気になります。

  5. la_vera_storia
    la_vera_storia at · Reply

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    中央駅さん、申し訳ありませんがこの記事についてのコメント、「中欧掲示板」に投稿しましたので御参照下さい。非常に長いコメントですし、皆様のご迷惑になってはいけませんので、このようにいたしました。あしからずご了解下さい。
    http://8821.teacup.com/via_regia/bbs

  6. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >Misaさん
    ここで室内楽をやったらどんな響きがするでしょうね。
    先日のMisaさんのブラームスに重ね合わせてみました。

  7. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >kaorintanさん
    サミットを控えて、いよいよベルリンでも警備が厳しくなっているようです。テレビのニュースもそれ一色になってきましたし、今回のサミットは私もかなり注目しています。特に地球温暖化対策でしょうか。

  8. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >akberlinさん
    ベルリンの底力ですか、なるほど。
    意外な場所に意外なカフェ。ノイケルンにはまだまだおもしろい場所が隠れていそうです。

  9. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >MOTZさん
    ここのウェイターさんはみんなかなり感じがいいです。働いていてもやっぱり気分が違うのでしょうかね。魚のスープは魚介類が満載で、それなりに量もあって、3,5ユーロぐらいでした。本当においしかった~

  10. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >la_vera_storiaさん
    早速拝見しました。読みながら思わずニヤリとなるような興味深いコメント、ありがとうございます。あのパサージュの話には唸らされました。後ほどこちらからもコメントいたしますね。

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