ホロコーストメモリアルでの記念コンサート(2)

前回に引き続き、ホロコーストメモリアルでの記念コンサートの模様をお伝えします。ドイツの終戦記念日翌日のこのコンサートは、2005年5月10日にオープンしたホロコーストメモリアルの3周年を祝う行事でもありました。
開演前に、ドイツ連邦議会副議長のヴォルフガング・ティアゼも挨拶。ホロコーストメモリアルは、1999年に連邦議会が建設を決定するまでに、長い道のりを経ましたが、当時議長だったこの人の存在は大きかったと言われています。
8時過ぎ、ハラルド・ヴァイス作曲”Vor dem Verstummen(沈黙の前に)”の世界初演が始まりました。2711基もの石碑の中に、指揮者のローター・ツァグロゼクを中心に、27人の室内オーケストラのメンバーが幾何学的なシンメトリーさで配置されます。演奏中、聴き手はその中を自由に動いて、場所による響きの違いを感じられることになっていました。でも実際は、皆さんなかなか自分の場所を離れようとしません。
指揮者を囲む4人のチェロ以外は、管楽器と打楽器のみという特異な編成。作曲家ヴァイスは、「言葉も音楽も驚愕のスケールをとらえることができず、人にただ沈黙をもたらす機会がある」と語っていますが、ホロコーストメモリアルの場にふさわしい静謐な音楽だったと思います。断片的に美しいメロディーを奏でるオーボエ、何かを暗示するかのように響きわたる鐘の音・・・。迷宮のような、そして墓場のような石碑の中を歩きながら、様々な音が聴こえては遠ざかっていく。それはコンサートホールでは得られない経験でした。
人をかき分けて行くと、ようやく要の位置にいるツァグロゼク氏が視界に。多方向の音楽家に同時に合図を送る指揮ぶりが見ものでした。
曲の終わりの部分で、1人の女性歌手が1942年に強制収容所で殺されたユダヤ人の詩の断片を歩きながら読み上げる中、20分弱の曲は終わりました。
最後に、日没の時間に合わせてもう一度、音と沈黙の狭間にあるようなこの音楽が、ホロコーストメモリアルの空間に鳴り響きました。
参考:
ホロコースト記念碑(1)(2005-09-24)
ホロコースト記念碑(2)(2005-09-27)

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2 Responses

  1. sora_atmosphere
    sora_atmosphere at · Reply

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    実際の音というのが聴きたかったです。
    素敵な試みだなと感じます。

    上の記事「魔笛」も良い試みですね。
    ドイツのさまざまな催しがとても興味深いです。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >sora_atmosphereさん
    ホールやライブ会場だけではない、ベルリンでの多様な音体験が私はとても好きです。耳を澄ませば、いろいろな音が、さまざまな意味合いを帯びて聴こえてくる街だと思います。

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