発掘の散歩術(21) – シェーネベルク自然公園を歩く –


新緑が美しく映えるようになった季節、今回はちょっとユニークな公園をご紹介してみたい。
ベルリンの南側のターミナル駅、ズュートクロイツ駅からSバーンで南に一駅、森に囲まれたプリースターヴェーク駅を降りると、てっぺんの赤錆びた昔の給水塔が目の前に立ちそびえる。地図を見ると、ズュートクロイツ駅を頂点に、Sバーンと長距離列車、それぞれが走る2本の線路に挟まれた細長の三角形状の敷地があるのがわかる。遠くからも目立つ給水塔だが、ここがシェーネベルク南地域自然公園という大きな公園になっていることは、最近まで知らなかった。
かつてのターンテーブルは今も稼働したのでびっくり
元々この敷地は鉄道の操車場だった。1952年、長年ベルリンの主要ターミナルだったアンハルター駅が廃止になると、その南側に位置する操車場も使命を終え、広大な土地は少しずつ自然に戻っていった。70年代後半に新しい貨物駅の建設計画が持ち上がると、環境運動に熱心な市民が猛反発し、開墾を食い止めた。多くの市民の努力の甲斐あって、やがて市から風景・自然保護地域に指定され、1999年に公園としてオープン。 2000年のハノーファー万博の公式プロジェクトに選ばれたことから、ベルリン以外でも知られる存在になったという。
自然公園内に保存されている1940年製の蒸気機関車
入り口で1ユーロの入場料を払って中に入る。天気のいい日曜日だけに家族連れが多かった。給水塔の下には蒸気機関車の大きな車庫が今も構えている。近くに戦前の蒸気機関車も保存されており、わくわくした気分になってきた。この日は中に入れなかったが、車庫の中では前衛アートの展示やダンスのパフォーマンスが行われることもあるという。よく見ると、周囲にはさまざまなオブジェが飾られている。この自然公園は芸術や文化、教育との結び付きも大事にしているそうだ。
ここから北側に向かって歩いてみた。鉄道の操車場跡というと、だだっ広い空間を想像されるかもしれないが、意外にもこの自然公園にそういう場所はない。木がどこまでも生い茂り、細い遊歩道に 沿ってのみ歩けるようになっている。ベルリンのほかの多くの公園と違って、ここでは犬や自転車の持ち込みもバーベキューも禁止。「そのような余暇の楽しみは、隣接するHans-Baluschek公園でどうぞ」とHPにも書かれていたほどだ。ここはあくまで、貴重な植物や野鳥も生息する自然保護地域なのである。
一直線の遊歩道が続くシェーネベルク自然公園
だが、この遊歩道に沿って歩くのは楽しかった。突然前にトンネルが現れたり、手作りの展望台があったり、ユニークなベンチやオブジェが置かれていたり、遊びが利いているのだ。遊歩道の下には、今もかなりの数の線路がそのままの状態で敷かれている。周囲の風景は自然に還りつつあり、枕木には苔が生えているが、産業化の象徴でもある鉄道の線路との調和が、奇妙な美しさを醸し出してい た。
緑のシャワーを存分に浴びながら、自然と産業遺産、アートとの融合を楽しむ公園、と言えるだろうか。そのために最適な季節がやって来た。
ドイツニュースダイジェスト 4月6日)
Information
シェーネベルク南地域自然公園
Natur-Park Schöneberger Südgelände

シェーネベルク南側に位置する18ヘクタールの自然公園。入場料は1ユーロ(14歳未満は無料)。敷地内には多くの線路のほか、今も機能するターンテーブルなども保存されている。マルツァーンの世界庭園やブリッツ庭園と同じく、グリーン・ベルリン有限会社が管理しており、3つの公園に共通の年間パス(20ユーロ)もお得。
住所:Prellerweg 47-49, 12157 Berlin
電話番号:(030)700 906 24
開館:毎日9:00~日没まで
URL:www.suedgelaende.de
カフェ・パレズュート
Café Paresüd

自然公園内にあるカフェ(Sバーンのプリースターヴェーク駅からすぐ近く)。土日のみの営業だが、緑に囲まれた中で、ブランチ(日祝の11:00~14:00)や種々のケーキなどを楽しむことができる。小さな子連れにもやさしい。150人まで収容可能な建物は、結婚式や各イベント会場としてもレンタルしているとのこと。
住所:Prellerweg 47-49, 12157 Berlin
電話番号:0173 208 30 23
開館:4~10月の土日祝11:00~18:00
URL:www.paresued.de

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2 Responses

  1. ogurik
    ogurik at · Reply

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    シェーネベルク自然公園の詳細なご紹介、ありがとうございます。
     ベルリン中央駅からICEでライプツィヒ方面に向かったとき、広大な操車場の跡地が森に埋もれている姿を見て、以来ずっと気になっていました。跡地が自然公園としてきちんと保存されている姿に感心しました。日本では、人工的なものが自然に還り、親しまれていた所として愛知・瀬戸の海上の森がありました。ここも愛知万博の会場なりかけて大きな議論を呼びましたが、結局大きな開発は避けられました。自然に戻った操車場を、元の施設も含めて公園として保存するドイツの人々の叡智に敬意を表したいです。ベルリンを訪問することがありましたら、必ず訪れてみたいです。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    ogurikさん
    コメントありがとうございます。そもそも、この場所の存在をそれとなく教えてくださったのは、ogurikさんでしたよね。あれから大分時間が経ってしまいましたが、ここでご紹介できるのをうれしく思います。確かにマニアックな場所であることは確かですが(^^;、こうやってきちんと整備しつつ、誰でも利用できるようにしているところはさすがだと思います。日本にも似た例があるですね。来月、もう1つ素敵な公園を取り上げる予定です。

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