発掘の散歩術(22) – ブリッツ庭園のチューリップ –

開花を控えたブリッツ庭園のチューリップ

4月半ばに入ってもなかなか気温が上がらない今年のベルリンだが、せっかくだから春らしいものを紹介したい。桜はそろそろ散ってしまったようだし、ほかに何があるだろう。そんなことをドイツ人の知人にふと漏らしたら、「ブリッツ庭園のチューリップはどう? 本当に素晴らしいから、一度行ってみるといいわ」と思いがけぬ一声。早速その数日後、ノイケルン地区の南側にあるブリッツ庭園を訪ねてみることにした。

Sバーンのヘルマンシュトラーセ駅からM44のバスに15分ほど揺られていると、右手に大きな風車 が見えてきた。メインの入り口から入場料を払って中に入る際、受付の人から「トゥリパーン(チューリップの博覧会の名前)は来週からよ」と教えられ、少しがっかりしてしまう。案内には「4月中旬~5月中旬の開催」と書かれていたが、まだ少し早かったようだ。でも、まずはチューリップの花壇を目指してみることにした。

ブリッツ庭園は、これまでご紹介してきたマルツァーンの世界庭園やシェーネベルク自然公園と同様、ベルリン市によって運営されているだけあって、樹木も花壇もきれいに整えられていた。とはいえ、90へクタールという広さゆえ、 チューリップ庭園までの距離感がつかめない。どのくらい歩くのだろうかと思っていたところ、近くに小さなホームを見付けた。そこで待つこと数分、狭い線路の向こうから汽笛を鳴らしながら、かわいらしいトロッコ列車がゴトゴトとやって来た。

1985年の庭園創設時から走っている保存鉄道だ。約50分掛けて公園内を1周することができ(乗車券は3.50ユーロ。子どもは2ユーロ)、1駅だと1ユーロで乗車できる。大勢の家族連れに混じって乗ってみた。爽やかな向かい風を心地良く浴びているうちに、チューリップ庭園の近くまで連れて行ってくれた。

庭園内を約30分おきに走る保存鉄道。往年の貴重な車両も運行中

湖に面したカレンダー広場から北東の出口までずっと続くチューリップは、やはりまだ開花していないものが多かった。それでも種類によっては、黄色、オレンジ、赤、紫などの鮮やかな花の色合いを楽しませてくれたし、これだけの数のチューリップが一斉に開花したところを想像すると、それだけで心はときめく。奥の方に行くと、人の名札が埋め込まれた花壇のスペースがあった。個人や団体がスポンサーとなって、花壇の特定の一角を買うことができるのだそうだ(広さに応じて、100~1000ユーロまでのカテゴリーに分かれる)。 自分が名親(Pate)となって咲かせるチューリップは、さらに格別なものに違いない。

ブリッツ庭園は、丸1日いても十分に楽しめる。いくつもの丘があり、湖があり、種々の庭園やユニークな橋にも事欠かない。帰り際、羊が放し飼いされた場所を通ると、子羊の愛らしさに目が奪われ、なかなかその場から離れられなかった。

満開のチューリップの様子はお届けできなかったけれど、チューリップのシーズンは5月下旬までとのこと。機会があればぜひご自分の目で、チューリップのお花見を堪能していただきたい。
ドイツニュースダイジェスト 5月4日)

Information
ブリッツ庭園
Britzer Garten

1985年、西ドイツ政府主催の庭園博覧会に際して造られた庭園。当時、東ドイツと境を接した西ベルリンの南側の住民に新しい公園を提供するというのが目的だった。入場料は2ユーロ(春のチューリップ、5~6月のツツジ、8~10月のダリアなど、特別期間中は3ユーロ)。夏の野外コンサー トや花火などのお祭り行事も。

住所:Buckower Damm 146, 12349 Berlin
電話番号:(030)700 906 80
オープン:毎日9:00~日没
URL:www.britzer-garten.de

カフェ・アム・ゼー
Café am See

カレンダー広場のItalo-Bistroやヴァッサーシュピール広場のMilchbarなど、ブリッツ庭園では飲食の施設も充実している。中でも大きな湖に面したCafé am Seeは、まるで「風の谷のナウシカ」に出てくるような建物の外観が特徴。日祝日はビュッフェが用意され、ときどき白鳥も寄ってくる湖を眺めながらの食事・休憩は楽しい。

住所:Mohriner Allee 145, 12347 Berlin
電話番号:(030)703 60 87
営業:毎日10:00~
URL:www.tafelrunde-berlin.de/cafeamseee



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