Bundeskanzleramtにて(8月26日)
例年8月最後の週末、ベルリンではドイツ政府主催の”Tag der offenen Tür”というイベントが行われます。これは、普段は入れない連邦首相府や外務省などの主要省庁ほぼ全てを一般に公開するというものです。”Tag der offenen Tür”とは「扉が開かれる日」という意味ですが、ベルリンにはこの名前のイベントがかなり多くて、このブログでもこれまでいくつかご紹介してきました。例えば、「べルビュー宮殿へようこそ」、「ティーアガルテン・トンネルツアー」、音楽関係で「フィルハーモニーの音楽の日」などです。その他にも例えば、ベルリン中にある各国の大使館を公開する日なんてのも毎年春にあります。
私が見てきた中で、これらのイベントの多くに共通しているのが、1.入場無料で、市民が気楽に参加できること(それだけに多くの人が押し寄せるので並ぶことも多いが)。2.単に中を見せるというのではなくて、屋台が並んでいたり、コンサートが行われたり、ディスカッションの場が設けられていたりと内容が充実していて、かつお祭り気分でも楽しめる。3.大人だけでなく、子供も楽しめる工夫がこらされていることが多い。
などが挙げられます。今回の役所の公開日もその例外ではなく、私が訪れた土曜日の夕方も大いに賑わっていました。
さて、今回公開された数ある連邦関係の役所の中でも、やはり一番人気は連邦首相府(Bundeskanzleramt)。国の最高権力者の館の中は一体どうなっているのか、一度中を覘いてみたいと思う人は少なくないはずです。案の定、官邸前にはすごい行列ができていましたが、建物が大きいためべレビュー宮殿の時ほどは並ばずに済みました。それでも1時間近くは待ったか。今日日曜日の14時からは、メルケル首相がここにやって来て市民からの質問に直接答える機会が設けられることで、より混雑が予想されるため、私は昨日行って来たというわけです。
この斬新な首相官邸はAxel Schultesの設計によるもので、完成は2001年。外観から想像がつくように、愛称は「洗濯機」です(笑)。
入り口付近に何やら人だかりができていますね。
実はここには、首相らが乗る車、護衛のバイクなどが展示されているのでした。
連邦首相府ご用達の車はメルセデスではなく、アウディでした。中も自由に覗き込むことができ、その傍には実際に現場で働いている人たちが立っていて、質問などにも気楽に応じてくれます。
外国の首脳が公式訪問をする際は、ここでアンゲラ・メルケル首相に迎えられ、赤じゅうたんの上をまたいで中に入るわけです。では、早速中へ!
明るく、とてもオープンな雰囲気のエントランスホール。
1階フロアの一角に、外国の国王や首脳から贈られた品々などが展示されています。
その中でも私が一番感動したのはこれ。ヴィリー・ブラント首相が1971年に受賞したノーベル平和賞の賞状。本物です。ただし意外なほど簡素。ノーベル賞といえども、こうして見ると紙切れですね^^;)。ノーベル平和賞の選考はノルウェー国会が行うので、文学賞などのようにスウェーデン語ではなくノルウェー語で記されています。
Markus Lüpertz作の彫像”Philosophin”を横目に、2階へ上がります。
さてこちらが2階。手前のソファーの座り心地は最高でした^^)。奥には、アデナウアーからコールに至る(シュレーダーのものはまだない)戦後ドイツの歴代の首相の肖像画が掲げられています。
これが先ほどのヴィリー・ブラント(1913-1992)。ベルリン市長の在任中にベルリンの壁が建設され、1969年に首相になってからはいわゆる「東方外交」でロシアや東ドイツなどとの関係改善に努めました。壁崩壊とドイツの再統一を見届けてから1992年に死去。ベルリンとの関係も強く、その功績を称えてか、現在の連邦首相府のアドレスはこうなっています。
Bundeskanzleramt
Willy-Brandt-Str.1, 10557 Berlin
さてこれも2階ですが、中央に円形の物体がありますね。あの中には何があるのでしょう?
これは国際会議室で、EUの首脳会談などもここで行われるようです。画面奥のほぼ真ん中にドイツの旗が見えます。
国際会議室を出てすぐ、この場所に見覚えのある方は多いのでは?首相がマスコミへの会見を行う場所で、首脳会談直後の共同記者会見などが行われるのもここです。
その隣には同時通訳用のブースがあります。
中にはこんな和み系のスペースもあったり。
さて、入り口とは反対側の建物の外に出ると、広大な芝生が広がっています。
そばを流れるシュプレー川を越えた向こう側まで、首相府が所有する広大な公園になっているのです。さすが。この細い橋を渡って向こう岸に行きます。
手前のモルトケ橋をバックに、ここから眺めるベルリン中央駅もいいものでした。
18時からは、この公園の一角でベルリン・ドイツ交響楽団の野外コンサートが始まりました。周りには屋台や子供用のテントが張ってあって、お祭り気分なのですが、あいにくの天気だったのが残念。
小雨がちらついてきたので、オール・モーツァルトプログラムの前半だけを聴いて出て来ましたが、首相官邸の内部や雰囲気がよくわかり、とっても得した気分になって帰って来ました。また、こういうことを毎年実行するドイツ政府のオープンさにも好感を抱いた次第です。
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このブログ見て「あー、そういえば今週末だった!」と思ったご近所さんです。駅なんかに広告が出てて、面白そうだなー、行こうかなーと思っててすっかり忘れてました。詳しいレポート&写真ありがとう。半分行った気分になれました。
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久しぶりにお邪魔します。首相官邸の建物の外見は、何度も見ていましたが、もちろん中には入った事がなかったのでとっても楽しく読ませて頂きました!愛称が洗濯機って、知らなかったです。笑。
それにしても、日本では考えられないオープンさですね…。
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”扉が開かれる日”良いですね~ わくわくしてこのレポートシリーズ
(シリーズ?!)好きです^^ 首相官邸と聞くとなんだか難くて
取っ付きにくいイメージになってしまいますが、広くて明るくて、
建物の外もとてもステキな空間が広がっているんですね。
会議室のビビッドさにちょっと驚きました。うちのモノトーン&スクエアの
会議室と一室交換してもらえないかな~(笑)
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>c/o Watollaさん
"Einladung zum Staatsbesuch"というメルケルさんからの招待状形式の広告、なかなかユニークでおもしろかったですよね。昨日の新聞によると、2日間で15万人以上の人が参加したというからかなりの盛況だったようです。
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>まりりんさん
先日はどうも!冬に見学した大統領官邸のべレビュー宮殿が伝統&クラシックだったのに対して、この首相官邸は新生ドイツの息吹を感じさせる見通しのいい空間という印象を受けました。こういうちょっとした試みが、政治の世界に興味を抱くきっかけになるかもしれませんよね。
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>gonta-mausさん
ちょっと変な趣味かもしれませんが、私は「首相動静」なんかを読むのが好きで、国を直接動かすこういう立場の人がどういう日常を送っているのか、とても興味があるんです。この会議室の色合い、いいですよね。日本の首相官邸も2年に1度ぐらい公開してもいいと思うんですが、まあ難しいかな。
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今日官邸行ってきました!先日は電話でのご案内ありがとう。楽しかったです。ベルビューも入ってみたかったけど、この2年ノーチャンスだったなぁ。残念!
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にわやまさん
大分昔の記事へのコメントありがとう。
楽しかったみたいですね。いつも思うのですが、こういうこと日本でもできないのでしょうかね。子供社会見学のようなものでなくて(こういうのはたまに行われるようですが)、税金を払っている大人も参加できるイベントとしてです。