隣人のありがたさ

ある程度の長期間ベルリンのアパートを空ける際、済ませておかなければならないことがいくつかある。私が毎回悩んでいたのが、留守中の郵便受けの管理と部屋の植物の世話だった。こういう時、例えば郵便物は局に差し止めにしておいてもらって、帰ってから取りに行くという方法もあるが、こちらの人は大抵どうするかというと、同じアパートの誰かに鍵を預けて頼むことが多いようだ。ドイツではまだ隣人同士の助け合いの精神というものが生きているといえるのかもしれない。私の住むアパートの住人は、基本的にみんな感じはいいし、すれ違うと挨拶はするのだが、それほど親しいといえる間柄の人はいなかった。ワールドカップの仕事で1ヶ月間家を空けた時は、郵便物は私の2階上に住む1人暮らしの女性に、植物の水差しは近所に住む日本人の友達にお願いした。今回はどうしよう?友達の家は少し離れているし、郵便物のチェックと合わせてまとめてお願いできる人はいないかなと探していたら、同じアパートの別館に住むドイツ人のある若いカップルを思い出した。彼らとは何回かアパートの前で立ち話をしたことがあり、とても感じのいい人たちだと思っていたのと、「困ったことがあったらいつでも訪ねて来てね」と言ってくれていたのを思い出したからだ。
それで先ほど彼らの部屋を訪ねてきたのだが、本当にフレンドリーな人たちだった。私は立ち話をしたらすぐに帰ろうと思ったのだが、中に入れてくれた上、ワインを勧められ、余り物でよければと結局夕飯までご馳走になってしまった^^)。ゼバスティアンはバイエルン出身のグラフィックデザイナーで、ベルリーナーのヨアンナはフランス語教師になるために勉強中という2人。私と年がほとんど変わらない上、2人とも世界のいろいろな場所を旅しているだけあって話が大変面白く、結局2時間近くもお邪魔してしまった。その中には、すぐにでもこのブログに書いてみたいと思わせるような話も出てきたが、それはまた機会があったらということにしたい。
久々によく話し、よく笑った。ドイツ語でコミュニケートするのがこんなに楽しいと感じたのはいつ以来のことだったろう。難しい言語だと感じることが今でも少なくないドイツ語だが、こういう人たちと心を交しながら会話ができるというのであれば、続けてきた甲斐があるなあと思った。留守中の郵便物と植物の世話も快く引き受けてくれたし、彼らには日本から何かお土産を持って行くつもりだ。



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4 Responses

  1. しゅり
    しゅり at · Reply

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    こんにちは、マサトさん!
    なんだか読んでいて、温かい気持ちになりました。
    こうやって気軽に夕食を人に招けて
    そして鍵を預けたり、人にものを頼んだりと
    人とのつながりがあるなんて日本とは全然違いますね。
    マサトさんの感動が伝わってくるような文章でした。

  2. shio
    shio at · Reply

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    初めまして。
    今年の夏に偶然このブログを見つけて以来、
    すごく面白くていつもチェックしています(^^)
    私はドイツ、特にベルリンが大好きです。
    戦争責任に対する考え方が、
    日本政府のそれとはまったく違うこと、
    ベルリンという都市そのものが
    激動の歴史を物語っているように
    感じるからです。
    なにか寂しい感じが、東京と似ている点も。。。

    今回の文章は、読んでいて本当に
    心がほっとするようなあたたかさが伝わってきて、
    とても感動してしまいました☆

    いつもありがとう。

  3. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >しゅりさん
    人に鍵を預けるというのは、日本的な感覚したらちょっと抵抗あると思うんですが、こっちでは結構普通なことなんですよね。郵便局という得体の知れない「役所」に留守中の郵便物を任せるよりも、アパートの隣人に頼む方がはるかに安心できます。こんな身近な場所に、心を交せる人たちがいたことがうれしかったです。

  4. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >shioさん
    はじめまして!ご感想ありがとうございます。
    shioさんがベルリンに惹かれる理由は、私もよくわかる気がします。

    >なにか寂しい感じが、東京と似ている点も。。。
    これも面白い視点ですね。
    今度久々に東京を歩くのが楽しみになってきました。

    またよかったらいつでも書き込んでくださいね!

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