ヤノフスキ&ルプーのベートーヴェン

先週の木曜日、ヤノフスキ指揮ベルリン放送響によるベートーヴェンプログラムのコンサートを聴きました。
前半のラドゥ・ルプーによるピアノ協奏曲第4番。初めて生で聴いたルプー!私の中では昨シーズンのアルゲリッチに続く、強烈なピアノ体験でした。といってもアルゲリッチと全然タイプが違うのは、舞台に登場した瞬間から一目瞭然。いまだ若々しさを感じさせるアルゲリッチに対して、ルプーはゆったりと舞台に歩み寄ってくるのですが、そこからしてもうただならない気配が漂っています。通常のピアノ椅子ではなく、フィルハーモニーの団員と同じオレンジ色の椅子の背に深く体を預けて、意外なくらいあっさりと弾き始めたベートーヴェンはもう完全に彼独自の世界。外側は融通無碍とでも形容したくなるような頑固な殻で覆われているのに、一歩中に入れてもらうと、そこには桃源郷のような美しい世界が待っていた。そんな感じでしょうか。彼のピアノには一流の芸術家の芸には必ず備わっている精神の自由がありました(もっとも伴奏するヤノフスキは大変だったでしょうが)。ともかくこんなに惹きつけられるピアノはそうそう聴いたことがありません。
後半は田園交響曲。正直こちらはあまりピンときませんでした。指揮者の意思ばかりが先行しているようで(もちろん空回りという意味では決してないのですが)、なおかつテンポが速めとあっては、なかなか音楽の真髄に浸らせてくれません(木管のソロ群はすばらしかった)。《田園》は昨年ラトルが聴かせてくれたような、1つ1つの声部を精緻に織り上げていくタイプの演奏が私は好きです。このコンビでは、むしろ5番などを聴いてみたいと思いました。来シーズンヤノフスキ&RSBは、弦楽四重奏曲の傑作群と組み合わせたちょっとユニークなベートーヴェン・チクルスを敢行するようなので、大いに期待したいと思います。



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2 Responses

  1. Tsu-bu
    Tsu-bu at · Reply

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    アルゲリッチに反応してしまいました。ヴァイオリンのクレーメルと共演しているベートーベンのヴァイオリン・ソナタ5番と9番のCDを持っています。特に9番のクロイツェルソナタが気に入っています。
    精神の自由を感じさせるヤプーのピアノ、ぜひ聴いてみたいです。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    Tsu-buさん
    クレーメルとアルゲリッチのデュオでは、最近2006年のベルリンのライブが発売になりましたね。
    http://www.hmv.co.jp/product/detail/3544124
    僕は聴いていないのですが、友達が絶賛していたので、このCDはぜひ欲しいです。おすすめかもしれません。

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