"Berlin, wie es war" (1941/50)

ベルリンの旧王宮(戦前の絵葉書より)
先日の私が出演したオケの本番に、あるドイツ人の友人が聴きに来てくれた。彼は映画にものすごく詳しく、会社で働きながら、最近では「趣味」で短編映画も撮っているらしい。2月のベルリン映画祭の期間中は、映画を観まくるためだけに、毎年会社を1週間休んでいるツワモノだ。そんな彼に、「ベルリンを舞台にした映画というのはどれくらいあるんだろう。代表的なものだけでもちょっと挙げてみてくれないかな」とビールを飲んでいる時に聞いてみた。「そうだな」と言いながら、彼は私のメモ帳にさらさらと書いてくれた。たちまちそのページがいっぱいになった。その中には「ベルリン天使の詩」や「グッバイ、レーニン!」、「Lola rennt」のような有名どころも含まれていたが、 タイトルさえも初めて目にする映画もあった。最近のものだと、現在公開中の”Sommer vorm Balkon“だ。
その友人の話を聞いていくうちに、「よし、これを一つづつ観ていこう」と私は思った。日本にいたらまず観る機会のない映画でも、さすがは現地というべきか、tipなどの情報誌で調べてみると、古い映画でも折りに触れて上演されているようだ。
そのリストの中に入っていた”Berlin, wie es war”という戦前(戦中)の映画を、Uraniaという映画館でこの日曜日観て来た。監督はLeo de Laforgueという人。撮影されたのは1941年頃らしいが、ナチスによって上演を禁じられ、公開されたのは1950年になってからだという。これはベルリンの「都市の肖像」のようなドキュメンタリー映画である。
まず最初に、同じ監督の”Das Berliner Schloß”というベルリンの王宮を紹介する20分弱の短い映画が上演される。戦争で爆撃を受ける前に、この内部を撮影した映像としては最後のものだという。なるほど王宮の中はこのようになっていたのかとその意味ではおもしろかったが、共和国宮殿を壊した後に、これをまたゼロから築き上げることに一体どれだけの意義があるのだろうかと、やはり思わざるを得なかった。ちなみに、この映画の上演前には、王宮再建の支援団体が募金を求めるPR活動を展開していた。
本編の”Berlin, wie es war”は、約80分間ひたすら1940年前後のベルリンの映像を流し続ける記録映画。この時代の映画の特徴として、ほぼ間断なくオーケストラの勇壮な音楽が背後で鳴り続けるのは少々うるさく感じられるが、古きベルリンの最期を記録した映像としては間違いなく貴重なものだろう。ウンター・デン・リンデン、アレクサンダー広場、ポツダム広場、ツォー周辺など、今も昔も変わらないベルリンの見どころがたくさん出てくる。フリードリヒ通り周辺やポツダム広場など、昔からこんなに人がいたのかというくらいにぎやかだ。街頭のソーセージ売りのおじさんや花屋のおばさんなどのシーンを見ると、今とあまり変わっていないなと微笑んでしまう。何回かナチのハーケンクロイツがちらりと画面に映ったが、戦争中という陰りは何も感じられない。たとえそのことを意識して撮影されたにしても。
当時の人々の娯楽シーンもふんだんに出てくる。ヴァンゼー(?)での海水浴、カーレース、アイスホッケー、ボクシング、オリンピックスタジアムでのサッカーの試合(スタジアムは満員の模様)、ヴァリエテと呼ばれるショーの様子などなど。コンサートのシーンではベートーヴェンの第9が流れていたが、会場はどうやら戦前のベルリン・フィルの本拠地だった旧フィルハーモニーのようだ。
私が期待していた、ベルリンに来て最初に住んだアパート周辺の風景はほとんど流れなかったけれど、この時空旅行はなかなかに楽しめるものだった。次は何を観ようか。

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14 Responses

  1. ymzk
    ymzk at · Reply

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    お久しぶりです。9月以来およそ4ヶ月ぶりの書き込み。
    実はオレ、映画大好きなんです。
    こういう映画ってDVDとかビデオとか出てないの?
    是非いろんな映画を観まくって、またいろいろ報告してください。
    楽しみにしてまーす!

  2. ジュリオ
    ジュリオ at · Reply

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    戦前のベルリンの記録映画ですか、いいですね。過去と現在の対比写真を掲載した本は持っているのですが、やはり映像でみたいですね。戦後にやっと公開されたとのことですが、当時見られた方は10年前の破壊される前のベルリンの光景にどんな思いをされたのでしょうね。もしタイムマシンでもあったら戦前のウンター・デン・リンデンやポツダム広場、ヴィルヘルム・シュトラーセなんかに行ってみたいです

  3. しゅり
    しゅり at · Reply

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    マサトさん、こんにちは。
    この戦前のベルリンのドキュメント映画!いいですねえ。
    昔と今のベルリンは当然違うけど
    随所に残る面影を感じるのもいいですよね。
    近代的なベルリンよりも、古き良き時代の建物が残る風景に
    遠い時代に思いをはせてしまいます。
    上のジュリオさんも書かれておられますが、
    私もタイムマシーンがあったら、ハッケシャーマルクト周辺や
    ヴィルヘルム・シュトラーセ、フリードリッヒ・シュトラーセをめぐって
    みたいです。
    この映画のDVD化ってあるんでしょうか?

  4. la_vera_storia
    la_vera_storia at · Reply

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    中央駅さん、久しぶりに書き込みます。
    戦前の街並みについては私も、発売されている写真集を昔からありったけ買い集めています。ベルリンという都市は、意外かもしれませんが映画の舞台にはなりにくい街のように思っています。こういう点、あのパリとは大きく違うのではないでしょうか? 東西分断時代に入ってでしたら、ベルリンの風景・雰囲気を非常によく伝える映画を2つあげておきます。両方ともご存じかと思いますが、ひとつはあのヴィム・ヴェンダース監督の有名な「ベルリン・天使の詩(Der Himmel ueber Berlin)」。もう1つはルドルフ・トーメ監督の「ベルリン・シャミッソー広場(Berlin Chamissoplatz)」です。

  5. la_vera_storia
    la_vera_storia at · Reply

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    2つめの「ベルリン・シャミッソー広場」ですが、これはご覧になった方は少ないのではないでしょうか? 分断時代のクロイツベルクを舞台にして、男女の恋愛感情を描いています。なにか切なさを感じさせて、観ていて苦しくなるときもあります。
    http://cinema.translocal.jp/books/cinemapolitica/c-057.html
    http://www.deutsches-filmhaus.de/filme_einzeln/t_einzeln/thome_rudolf/berlin_chamissoplatz.htm
    この映画のことをご説明しようとすれば、それはどうしても70~80年代におけるクロイツベルクの状況のことをお話しなければなりません。それを書けば膨大な字数になりますので、ここでは省略します。

  6. la_vera_storia
    la_vera_storia at · Reply

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    この2つの映画、最初に観たのはいずれもパリででした。DDR出身の女性と一緒でした。「ベルリン・天使の詩」については彼女いわく、「なにがなんだがさっぱりわからなくて退屈。なのにとっても詩的!」。「ベルリン・シャミッソー広場」については、「私のまったく理解不能な西ベルリンの情景。でもこれ、あなた好みの映画みたいですね!」と私を皮肉っていました。生きてきたバックグラウンドが違えば、いろいろな感じ方があるということです。

  7. lignponto
    lignponto at · Reply

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    「ベルリン・天使の詩」は、観ましたが、「ベルリン・シャミッソー広場」も観てみたいですね。DVDでも出ればいいのですが・・・。
    今、「白バラの祈り」が公開されているので、必ず観るつもりです!!
    ベルリン映画祭のレポートも楽しみにしてます。

  8. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >ymzkさん
    ついに再登場してくれましたね!
    久々の書き込み、とてもうれしいです。
    >こういう映画ってDVDとかビデオとか出てないの?
    今回のこの"Berlin wie es war"は、現在のところ発売されていないようです。こういう昔の映画は映画館ではなかなか上演していないので、レンタルビデオ屋などで探すことにもなると思いますが、そういう場所に普通に置いてあるのか私も気になるので、何かわかったらまたお知らせします。

  9. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >ジュリオさん
    戦前のベルリンが舞台の映画は他にもあるので、また何か観たら感想を書きたいと思っています。確かに映像だと、写真では伝わらない何かがありますね。
    >タイムマシンでもあったら
    同感です!私だったら、戦前のターミナルだったアンハルター駅からベルリンに入って、ポツダム広場の賑やかさを体感してみたいですね。あと、旧フィルハーモニーでフルトヴェングラー指揮のベルリン・フィルも聴いてみたい!宿泊はホテル・アドロンで豪華にいきます(笑)。

  10. ISR
    ISR at · Reply

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    初めまして。他のブログのリンクをたどって来ました。
    知らないベルリンが沢山あり、圧倒されました。今日は
    読みきれ無かったので、また後日寄らせてください。

  11. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    しゅりさん、こんにちは!
    私も戦前のベルリンには相当惹かれるものを感じます。「黄金の20年代」なんていいますが、あの頃のベルリンはどんなに華やかだったんでしょうね。

    >この映画のDVD化ってあるんでしょうか?
    amazon.deを見たところ、VHSなら買えるようです。こういう地味な作品になると、なかなかDVD化はされないのかもしれませんが、すでにDVD化されている映画もご紹介していきたいと思っています。

  12. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >lignpontoさん
    「白バラの祈り」、今公開中なのですよね。観る価値のある映画です。今年のアカデミー賞にノミネートされたと、先ほどのニュースで流れていました。

    >ベルリン映画祭のレポートも楽しみにしてます。
    今日プログラムが発表されたようです。今月は行事が盛りだくさんで、時間とお金が続かなくなること必死ですが、こちらの様子もお届けしたいと思っています。

  13. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    ISRさん、はじめまして!
    「北京伯林」、かっこいいタイトルですね。
    同じベルリンブログとして、いろいろ刺激を受けそうです。時間のある時にゆっくり読ませていただきますね。これからもどうぞよろしく!

  14. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    la_vera_storiaさん
    久々のご訪問、大変うれしく思っています。これからもどうぞよろしくお願いします。

    今回の映画ですが、「ベルリン・天使の詩」の他に、「ベルリン・シャミッソー広場」を紹介してくださったのがうれしかったです。実は「シャミッソー」の方は、最近友達からその存在を教えてもらったばかりで、ぜひ観てみたいと思っていた矢先だったからです。何といっても私は、このシャミッソー広場から徒歩5分の場所に住んでいるので、この広場が舞台の映画というだけで何かわくわくするものを感じます。今度レンタル屋さんで探してみるつもりです。

    >この映画のことをご説明しようとすれば、それはどうしても70~80年代>におけるクロイツベルクの状況のことをお話しなければなりません。

    こちらも機会があったら、ぜひ聞いてみたいです。コメント欄は限られていますから、もしいつかお話してくださる機会がありましたら、本欄に掲載させていただきたいです。

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